機関紙誌等に発表した雑文等を掲載しています。
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あけましておめでとうございます
2013.1.1
震災がれき焼却灰 2013.01.24
新川広域圏事務組合が岩手県からの震災がれきを受け入れるにあたって試験焼却と焼却灰の埋め立てが行われ、立会人を公募した。
出かけるときは久しぶりの晴天。
思いのほか参加者は多く、バス1台がほぼ満席だった。
岩手県山田町からのガレキ10トンを通常のゴミ140トンと一緒に焼却し、焼却灰はすぐに検査に出した。焼却灰の放射能は35ベクレル/Kgであった、と報告された。なお、検査機器は広域事務組合では所有していないので外部に委託したとのこと。県の環境科学センターには機器があるが、このような業務には使われていない。
最終処分場は魚津市下椿の谷あいにある。周囲(木立の向こう側)は農地であり、下椿、舛田、上野などの集落があり民家がかなり存在する。
焼却灰はセメントでペレット状に固めて搬入された。広域事務組合の職員が地上高1mで線量計をかざして空間線量率を計測した。焼却灰ペレットの上のほか、場内の2ヶ所と縁の道路上で計測。0.07〜0.09μSv/h であった。
なお、高めにでた地点はくぼ地のような地形の場所であり、低めに出たうちのひとつは周囲に水溜りが広がり、雪も積もっていた。もうひとつは処分場のへりの段上で、小高くなって周囲が開けた場所であった。このような環境要因が働いているものと思われる。
ペレットは重機で平らにならしたあと、砂を約50センチ厚さで被覆した。そのあと、処分場周辺の数ヶ所で空間線量率を測定するとのことだったが、雨が降り始め、気温が下がってきたため、立会いは早めに切り上げることになり、「もくもくホール」に戻って、解散になった。
線量計を見せてもらった。アロカのシンチレーションサーベイメータTCS-172
価格は約50万円。業務用としてよく使われている機種だ。
自前のものかどうか聞き忘れた。
処分場の防水シートのへりにスギゴケが生えていた。
真冬だというのに青々として胞子嚢をつけている。
生命力に脱帽。
放射性物質は拡散すべきではない、そもそも、遠路はるばるガレキを運んで焼却する必要があるのか? といった基本的な問題はあるが、やむをえず受け入れるとしたら…という前提で考えてみる。
100Bq/Kg 以下という基準はかなり厳しいものだ。生活環境に置かれることを想定し、年間1mSvの人工放射線被爆限度の基準に対して1%程度の影響(0.01mSv/y)にとどめるべきとするIAEAの勧告に基づいている。(注)
国は急に8000Bq/Kg でも通常のゴミに準じて処分可能と言い出したが、それを受け入れさせなかったのは市民の力が大きい。この日も、処分場近くの路上に、横断幕やプラカードを掲げる人が数人いた。彼らの運動が寄与していると思う。
0.01mSv/yを逆算すると、0.001μSv/hほどの変化であり、空間放射線量の計測で違いが分かるようなレベルではない。もし明瞭な違いがでるようなら、桁違いに大きな放射能を有することを意味する。100Bq/Kg以下を証明するために空間線量を計るのは無意味であり、安全アピールのパフォーマンスに過ぎない。
東北のガレキを持ち込むより以前から、汚染の拡散によって、放射性物質がゴミ焼却灰に濃縮されている可能性がある。今回、そのことに対してまったく備えがないことを知って驚いた。なにせ機器が高価なもので、と言っていたが、せめて県のレベルで、日常的なベクレルモニタリングができるようにすべきだ。
昨年、福島県で捕獲されたツキノワグマの肉から430,170 Bq/kgの放射性セシウムが検出された。焼却灰だけでなく、野生の動植物についてもモニタリングが必要だ。
100Bq/Kgは外部被爆の線源としては弱いものかもしれないが、これが飛散したり水に溶けて流出したりすると、内部被爆につながる。飛灰に含まれるセシウムは水に溶けやすい化合物として存在する。こちらの危険性が桁違いに大きい。
今後、100年単位での「閉じ込め」が求められる。
(注)クリアランスレベルの決定に際して、原子力安全委員会はCs134を500Bq/Kg、 Cs137を800Bq/Kg とする答申を出した。しかし、国はIAEAの勧告値100Bq/Kgを採用した。事故後、原子力安全委員会は3000Bq/Kgまで容認する意見を提出し、環境省は8000Bq/Kgまでは通常どおりの埋め立てが可とする通知を発した。8000Bq/Kg以下ならば埋め立ての作業員の追加的被ばく線量は1mSv/y以下(年間250日従事して1日4時間現場に出ると仮定)、周辺住民の追加的な被ばく線量は0.01mSv/y以下になる、としている。管理された状態での外部被ばくのみを想定している。漏出事故などは想定されていない。
(付)国の考え方を知るために →
(付)ガレキの放射能について。山田町から搬出する際の測定では 26Bq/Kg とのことだった。それを15倍に薄まるように一般廃棄物と混ぜて燃やした。
焼却灰のセシウム濃度は、Cs134が11Bq/Kg、Cs137が24Bq/Kg、計 35Bq/Kgと報告されている。国内でもっとも多いストーカ式焼却炉では、
焼却灰は主灰(しゅばい)と飛灰(ひばい)に分けられる。セシウムの約7割が飛灰に移行するというデータがある。焼却灰の放射能を云々するとき、主灰ではなく飛灰のほうを対象にしている。環境省の資料によれば、ストーカ式炉では重量で3%、流動床式炉では6%に濃縮される。新川広域圏の焼却炉は流動床式である。この形式では主灰が出ない。主灰に相当するものは「流動床不燃物」と称される。この不燃物について測定した例は少ないが、やはりセシウムが濃縮されて残留するようである。
(付)トレーサビリティについて。国の文書をみると、8000ベクレル/Kg以下なら問題ない、とするばかりで、放射性物質が全体としてどのように移動したのか、ということにはまったく頓着していない。また、震災ガレキだけ計測すれば事足りるとしていて、普段の状態をコントロールとして把握するつもりはないようだ。地方によっては、8000ベクレルで線を引かないと、ゴミの焼却そのものが滞ってしまうという厳しい現実が確かにある。しかし、通常のゴミの最終処分と同じ扱いでOKという感覚が理解しがたい。「安全神話」の延長線上にある思考パターンだ。
1st Upload 2013.01.25
Last UpDate 2013.02.15
処分場 2013.03.14
3月14日、升方から金山谷への山道を通った。マンサクの花を見るのが目的。それと、1月24日の「がれき焼却灰埋め立て」に立ち会った際に、東側の山の尾根に道が見えていて、気になっていた。
たぶんあそこだろう、と見当をつけていた場所に降り立つと、思ったとおり、処分場の全体が見渡せた。木々に葉が茂ると見通せなくなるかもしれない。何度も通ったことのある山道なのだけれども、いままで処分場には気づかなかった。
ちょうど焼却灰を埋めたあたりがブルーシートで覆われている。焼却灰のセシウムは水に溶けやすいので、その対策かと思われる。排水口から一番遠い山側に埋めたのも同じ意図か。いずれは流れて下っていくけれども、できるだけ遅らせ薄めようとしているのであろう。
そもそも放射性物質は、拡散し薄めて安全とすべきシロモノではない。分離、濃縮、隔離するのが普通だ。3月28日、「新川広域圏事務組合」は、岩手県山田町からのがれきを本格的に受け入れることを決めた。1500〜1600トンの処理を予定している。前回の試験焼却の際のがれきの放射性セシウムは26Bq/Kgだった。この数字をあてはめると、4千万ベクレルほどの放射性セシウムが埋め立てられることになる。
(付記)その後、計画が変更され、県内の総量1256トンで終了となった。新川広域圏の処理は約300トン、8月5日の埋め立てが最終、当初予定の5分の1以下になった。
汚染水 2013.04.12
「核兵器廃絶をめざす富山医師・医学者の会」MLより
貯水槽から放射性物質を含む汚染水が漏れ出たことがニュースになっています。
1立方センチ・メートルあたり1万ベクレルの放射性物質が検出されたとのこと。
1リットル(≒1キログラム)なら1千万(10メガ)ベクレル。
とんでもない高濃度です。
ところで、この数字は「セシウムの除去処理をしたあとの水」の濃度(崩壊密度)です。
セシウム以外の放射性物質についての濃度になります。
ガレキの汚染や大地の汚染をあらわす場合には、放射性セシウムのベクレル値を公表しています。汚染の状態を、ガンマ線を放射する能力という一面だけで表しています。これらの汚染も「すべての放射性物質」を対称にすれば、値は桁違いに大きくなるでしょう。
福島原発事故で放出されたセシウム137は広島原爆の169倍、と言われます。
これは政府(原子力保安院)が公式に発表した数字に基づいています。
すなわち、平成23年4月25日に政府が東電に対して報告を命じ、
5月16日に報告があり、6月6日、それにもとづいて政府がIAEAに報告するとともに公表したものです。
Cs137の放出量
福島: 1.5 x 10~16 ベクレル
広島: 8.9 x 10~13 ベクレル
1500/8.9=168.539325842… ≒ 169
核爆発と原発事故を単純に比較することはできません。たとえばCs134は原子炉の中で生成するが、核爆発では生成しないといわれています。Sr90は元の核物質の量の割には爆発で多く、炉では少なくなります。とはいえ環境への放射能汚染は原発事故のほうが桁違いに大きいことは確かです。いっぽう、「直接被ばく」については、原爆や臨界事故ではガンマ線もさることながら、それ以上に中性子線による強力な外部被ばくが大きく作用します。
注意しておきたいのは、この数字の元になっているのは3月11日から4月5日
までの大気中への放出放射能とされ、東電がおこなった測定と推定によるということです。
4号機は対象外です。汚染水、そして海水への拡散は含まれません。
爆発時よりは少なくなったかもしれないけれども漏出はその後も続いているはずです。
また、外国の研究チームからはもっと多いとする指摘があります。
もうひとつの注意点、トリチウム、炭素14について。出ていないはずはないのですが、福島事故の見積もりには入っていません。どういうことなのか? 政府(原子力保安院)は、それでよしとしたのか? 合点がいきません。
ナチス憲法 2013.08.26
「核兵器廃絶をめざす富山医師・医学者の会」MLより
桜井よしこ氏が理事長を務める「国家基本問題研究所」が開いたシンポジウムでの、
麻生副総理の発言が話題になっています。こういう集まりに招かれるだけでもオットットかとは思いますが・・・
ヒトラーは選挙で選ばれた。ドイツ国民はヒトラーを選んだ。ワイマール憲法という当時欧州で最も進んだ憲法下にヒトラーが出てきた。
ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね。わーわー騒がないで。本当にみんないい憲法と、みんな納得してあの憲法変わっているからね。
(新聞報道から要約)
「ナチス憲法」というものは存在せず、
麻生発言は歴史的事実の誤認ということで、片付けられそうな雲行きです。
しかし、ワイマール憲法の下で、憲法改正などという面倒なことをせずに、
ナチス独裁が成立した、という歴史こそがポイントであり、麻生発言は、
そこを狙ったものに他ならず、承知の上で「ナチス憲法」なる言葉を使っただけでしょう。
表現上のテクニックです。
「無知」などと、矮小化してはいけません。
「憲法改正!」と、わーわー騒ぐ聴衆に向かって、ちょっぴり上から目線で、換骨奪胎の高等戦略を説く。そんな光景が目に浮かびます。
憲法はそのままで集団的自衛権の行使は可能、と「有識者会議」は言います…
まさに粛々と日本国憲法のナチス憲法化が進んでいます。
「護憲」=憲法の条文を変えないこと、と思っていると足元をすくわれる危険があります。
アベノアゼンプレゼン 2013.09.16
「核兵器廃絶をめざす富山医師・医学者の会」MLより
2020年のオリンピック開催地が東京に決まりました。招致のための安倍首相のプレゼンが話題になっています。米国に留学経験のある首相は、さすがに流暢に英語をしゃべっているように(英語が苦手な私には)見えました。
原発に関連する部分は下記の通り。
Some may have concerns about Fukushima.
Let me assure you, the situation is under control.
It has never done and will never do any damage to Tokyo.
朝日新聞は「コントロールできており、東京には何の影響も与えない。問題ない」と報じ、読売新聞は「状況はコントロールされている。私たちは決して東京にダメージを与えない」と報じました。
NHKはWEB版の対訳で「フクシマについて、お案じの向きには私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」としています。産経の報道は、NHKの文章と一字一句違いません。不思議に思って調べてみたら、どちらも官邸HP掲載の日本語訳を転載しています。これが正式訳ということなのでしょう。
枝葉末節のことかもしれませんが、この「under control」の部分が気になります。某民放局のキャスターが、政府の関係者に取材したところ、「政府が入っていって、コントロールしますってことを言ってるんであって、現状が完全に制御されていることを言ってはいない」とのことです。
NHKほかの報道で使われた「統御」という難しい言葉は「指揮命令し監督する」という意味であって、けっして「事がうまく運んで安全が確保されている」という意味ではありません。
しかも「保証」しているのは国ではなく、安倍さんです。もし約束を違えたと責められるような事態になれば、病気になって辞任すればけりがつきます。
さすがに官僚は頭がいいな、と感心します。
野田前首相が「収束状態にある」と言ったときにも、舌を巻きました。「状態」をつけることで、見事に輪郭をぼかします。達人のぼかし画法です。
悪徳商人が吐いたという言葉を思い出しました。
「欲の皮がつっぱっているから騙される。騙されるほうが悪いのだ」
皮膚はたるんでいて、つっぱるほどの欲の皮はありません。これからは、眉につばして、騙されないよう心掛けることにしましょう。
付記:官僚の巧みな作文のことを「霞ヶ関文学」と称するようです。検索をかけると山ほどヒットします。
邪説 2013.09.18
「核兵器廃絶をめざす富山医師・医学者の会」MLより
9月12日の某全国紙社説は『「1ミリ・シーベルト」への拘りを捨てたい』と題して、福島での除染の「効率化」と住民の帰還を促している。暫定基準である「年間20ミリシーベルト」を当分のあいだ受容するよう求め、積算被ばく線量100mSvまでは広島・長崎の調査で「がんとの因果関係は認められていない」と言う。これは「成人の固形がん」に限定した考察であり、低線量域では対照群の設定などに問題がある。調査の不備ないし限界を、健康全般に影響がないかのように話をすりかえている。
そもそもガンマ線による外部被曝のみをとりあげて、汚染された土壌の危険性には頓着していないようだ。
防護服、防塵マスク、ゴム長靴で身を固めて汚染域に入り、汚染した防護具を脱ぎ捨て、洗浄して退出する。一時的な作業が目的なら、それでいいかもしれない。
しかし、そこで生活するとなると違ってくる。被曝の源はガンマ線だけではない。放射性セシウム以外に、空間放射線では計測されていないアルファ線、ベータ線を放射する物質がたくさんある。地表から舞い上がり、空中に漂う。野菜や魚に移行する。内部被曝の対策が不可欠だ。
核種ごとにベクレルで測定して、その濃度分布や変化を追っかけなければならないはずだ。それがまったく行われず、あるいは、行っていても発表せず、地上1mのガンマ線だけをとりだして云々する。こんな邪説がまかり通るなんて‥‥いったい、この国‥‥この国の政府、この国のメディア、この国の人々はどうなってしまったのだろう。
イワウチワ