BOOK2013
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 《2012|2013- 1011122014



福山哲郎『原発危機・官邸からの証言』ちくま新書
著者は参議院議員で、菅内閣の官房副長官として原発事故対応の最前線にいた。 「官邸側の、政治家の言い訳ではないのか、自己保身のための弁解ではないのか、という批判を避け得ないことはもとより覚悟している」(プロローグ)という。不都合なことは避けているかもしれないが、それなりに内側からの事実経過や雰囲気を生々しく記録している。 時系列で官邸の動きなどを記述している。菅首相のやり方には問題もあったかもしれないが、それよりも何よりも東電の対応は桁違いに問題が多かった。「菅降ろし」のあざやかな手並みを見て、原子力ムラの隠然たる力を思い知らされた。▼163-164ページに、「年間100ミリシーベルト」の被ばくでがんの死亡リスクが0.5%上昇する、との記述がある。年が明けたらリセットされるとでも思っているのだろうか。ミスター100ミリシーベルトのまやかしに見事にはまっている。政府の中枢にいた人間がこれでは困りものだ。(2013.01)

山口幸夫『ハンドブック・原発事故と放射能』岩波ジュニア新書
「ジュニア」でなくて「シルバー」世代だけども、易しく書かれていてちょうどいいかも。著者は物性物理が専門で、故高木仁三郎氏とは大学時代からの友人だったという。 ▼事故をおこしたマークT型の改良型であるU型、V型には、圧力容器の真下に水を蓄える部分があって、メルトダウンしたら水蒸気爆発を起こす危険がある。福島第二の1〜4号機はU型である。第一の4号炉の使用済み燃料プールは、たまたま工事中でしかも予定が狂っていたことが幸いして冷却水が失われなかった。さもなくば首都圏も退避になり、国家の機能が崩壊していたかもしれない。 ▼核物理学の発展は、天動説から地動説への転換のような、大きなエポックであった。皮肉にも、それは原爆という形で結実した。 原爆による被爆は、核爆発後1分以内の初期放射線と、その後の残留放射線に分けられる。後者は、核物質の飛散によるものと中性子による放射化によるものがある。LSSでは残留放射線を無視している。そのような不十分さはあるものの、大きな対象集団を長期間追いかけた貴重な資料である。(ちなみに広島の爆心地から2km地点での被爆線量は81mSvとされている) さまざまな研究から、被ばくによって引き起こされる疾患は「がん」だけではなく、心疾患、脳血管障害、消化器系疾患、呼吸器疾患など多種多様である。が、国際機関はそれを認めようとしない。 ▼最後に「ハードパス社会からソフトパス社会へ」と提唱している。エコとかスローと称されるものと重複するがもっと広い概念のようだ。(2013.01)

大島堅一『原発はやっぱり割に合わない』東洋経済新報社
「安全神話」とともに「安価神話」が原発を推進してきた。著者は、福島の事故以前から原発のコストを研究し、「原発は割に合わない」と主張してきた。「私が今、とても心配しているのは、このような悲惨な事故を起こしたにもかかわらず、何事もなかったかのように、今までと同様、原発開発一辺倒の体制が続いてしまうことです」(「はじめに」) ▼「電源三法」と呼ばれる法制度があり、1kWhあたり0.375円の「電源開発促進税」を徴収されている。その大部分が原発のために使われ、使い切れないために、使途の範囲が緩和され拡大されてきた。原子力「村」というには余りに強力な財政のバックを有し、政・官・財・労働団体・学界・マスコミなどなどを取り込んできた。著者は「原子力複合体」と呼ぶ。 ▼原発の発電コストは5.3円/kWhと公表されている(2004)が、これは、運転期間40年、稼働率80%と仮定した「机上の空論」である。大事故は想定されていないし、廃棄物、廃炉などのバックエンドのコストもあいまい。「総括原価方式」で電気料に転嫁されるから、広告宣伝費、寄付金などには糸目をつけない。 ▼原発の「社会的コスト」は政策費用と事故費用に分けられ、前者は主に電促法をもとに研究開発費用や立地対策費用として使われている。これが原子力では1kWhあたり1.72円、火力は0.04円となる。政策費用を加算するだけで原発はもっとも高い電源となる。しかし、直接支払っている費用だけみると原発のほうが電力会社にとっては割がいい。 ▼事故費用の見積もりは大変に難しい。大事故は起こらないという前提で運営されてきたが、福島の事故により、否が応でも事故費用を考えざるをえなくなった。原子力委員会が算出した損害賠償費用は5年で6兆8503億円。固定資産税評価額を賠償の上限とし、健康被害は生じないものとしている。 ▼除染の費用は東電が負担するタテマエになっているが、はたして可能なのか。 チェルノブイリでは7ヵ月後に石棺が出来ていた。福島では減ったとはいえ、いまだに放射能の漏出が続いている。この先、気の遠くなるような収束作業、廃炉、廃棄物の処理などなどが必要になる。原子力委員会の見積もりでは40年で1兆1510億円となっている。年額にすると300億円ほど。とてもこれで足りるとは思えない。 ▼「たった数十年で溜めた廃棄物を、10万年先までの将来世代に押し付けることの倫理的意味を、今こそ考えなければなりません」(174p 第5章の最後) ▼電力会社および経営陣に責任をとらせれば、経済原理にしたがって自然と原発は廃れていくはずだ。 原発は固定費が高く、稼動させなくとも大きな経費がかかる。それが再稼動のいちばんの動機だ。国策に基づいて、国に協力して原発を作ってきた、だから責任の大部分は国にある、というのは言い訳だ。「国策」の策定に強い影響力を行使してきたのは、ほかならぬ電力会社関係の人脈である。 ▼示唆に富む書である。著者は、政策費用や事故費用をコストとして認めさせるまでの苦労を語っている。想像できないような、ほんとうに酷い扱いを受けている。節を曲げなかった著者に敬意を表する。(2013.01) →同じ著者による『原発のコスト

門田隆将『死の淵を見た男』PHP
地震発生から1週間ほどを描く。関係者への取材を元に、ノンフィクションの物語風に記述している。海水注入について官邸が止めろと言ったとか言わなかったとか。第一からの「退避」をめぐるやりとりでは、総理の「演説」が現場の志気を損なったように記述している。現場や国のほうで大混乱になっているとき、東電本社や社長・会長が何をしていたか、についてはまったく記述がない。 ▼免震重要棟よりも、さらに現場に近い中央制御室の描写が多い。自衛隊の応援や、周辺での動きや、後日談も加わるが、圧倒的に現場が中心だ。 ▼現場の動き、心象風景が生々しく伝わる。現場の頑張りは光る、賞賛されてしかるべきだ。しかし、英雄志向とでもいうか、そこばかり強調しすぎているような気もする。報告書ではないのだから、割り切って読むべきものなのだろう。(2013.01)

社団法人全国有料老人ホーム協会『シルバー川柳 誕生日ローソク吹いて立ちくらみ』ポプラ社
タイトルになっているものを含め、88句の「シルバー川柳」を収録している。「紙とペン探してる間に句を忘れ」「立ちあがり用事忘れてまた座る」「このごろは話も入れ歯も噛み合わず」「早送りしたい女房の愚痴小言」…などなど、楽しい川柳が1ページに1句、大きな文字で印刷されている。30分もあれば読めてしまう。(2013.01)

丸子かおり『放射線測定のウソ』マイナビ新書
「ウソ」と大上段に構えるほどのものではなく、線種や誤差など、当たり前のことが書かれている。機器の特性を知った上で使えばいいだけの話なのだけれど、一般人に厳しい目をむけ、萎縮させようとしているような印象を受ける。文科省のプロジェクトの委員であるが「国の回し者」ではない、とわざわざ断っている。が、役所等に対しては甘いみたいだ。 たとえば、焼却のために運びこまれたガレキのコンテナの周りで空間線量を測って、「安全です」とやっている役所の行為をどう見るのだろうか。 ▼首を傾げたくなる内容もある。 カリウム40を必須栄養素のように記述している。 ベクレルを壊変で出た「放射線の数」のように説明している。花粉と比べてプルトニウムが飛ばない、と言うが、ゴビの砂漠から黄砂が飛んでくることを思えば、気休めにはならない。雨が降ると線量が下がる、と図入りで説明しているが、ラドン222の崩壊産物ビスマス214が原因で上昇するのが定説のはずだ。 ▼シロウトをバカにするような表現に満ちている。間違った測定をひけらかして注目を浴びようとする輩はいるかもしれず、それには注意が必要だ。しかし、測るなと言わんばかりの主張に違和感を抱きながら読み進めた。最後のほうで、自分が「人を疑ってばかりいる嫌な人間」のようだと書いている。自覚しているのが救いかもしれない。(2013.01)

菅直人『東電福島原発事故・総理大臣として考えたこと』幻冬舎新書
市川房枝を担ぎ出して、後には利用してご機嫌を損ねたり、介護保険導入時に、官僚にうまく丸め込まれて「老人金持論」の旗振りをしたこともある。信念を持って、自分で考えているようでいて、実のところ流されているところもある。衆目の一致するところでは短気であるらしい。 ▼当事者であるから、それなりに割り引いて読む必要はあるだろう。それでも、どこに思い入れしているか、どこで思い違いをしているか、どこで空回りしているか、などなど興味深い事柄も読み取れる。 ▼「破滅を免れることができたのは、現場の努力も大きかったが、最後は幸運な偶然が重なった結果だと思う」(36p) 大爆発の危険があった2号機がサプレッションチャンパーの部分的な破損で済んだ、4号機の燃料プールが偶然の工事のトラブルのおかげで空焚きにならなかった。当時の危機感、結果としての「幸運」は繰り返し強調されている。 総理を退陣し「脱原発と自然エネルギー問題に絞って、政治活動を続けることを決意した」という。そのわりに静かである。 (2013.02.01)

大島堅一『原発のコスト』岩波新書
地元の書店にはなくて、富山市の書店に平積みになっていた。 ▼第一章「恐るべき原子力災害」:保安院の発表でCs137の放出量は1京5千兆Bq、広島原爆では89兆Bq だから169倍。しかも、漏出はまだ止まっていない。いまだ顕在化していない被害はとてつもなく大きい。 ▼第二章「被害補償をどのようにすすめるべきか」:「原子力損害の賠償に関する法律」ではプラントメーカーが免責されている。原子力草創期の米国企業の圧力による。社債市場の混乱を恐れる経済界の反対で東電の法的整理はできなかった。 原子力損害賠償支援機構法が成立。原賠法でカバーしきれない賠償に資金を交付するのが目的の仕組みだが、「原子力政策を推進してきたことに伴う社会的責任」と国の責任を記述している。 ▼第三章「原発は安くない」:2004年に経産省の審議会が報告書の中で示した数字は、そもそもは電事連が審議会に提供した資料がもとになっていて、さらに「エネルギー白書」に引用され、無批判に広がっていった。元の資料は実績から算出されたものではなくモデルプラントを想定して算出したものである。すなわち、80%の稼働率で40年間運転するものとしている。 ミドル電源、ピーク電源といった非効率になる発電は原発には不向きなので、それらは火力などに押し付けている。「総括原価方式」によって、不当に巨額の「経費」が原価すなわち電気料に組み入れられてきた。国が支出してきた政策経費。立地のための電源三法交付金、これらを算入すると原子力は最もコストが高くなる。それだけでなく、事故リスクコスト、バックエンドコストが加わる。「原発が安い」などと主張するのは正気の沙汰ではない。 ▼第四章「原子力複合体と『安全神話』」:村と呼ぶにはあまりにも強力な政治的、経済的パワーを持っている。アメリカの軍産複合体にちなんで原子力複合体とよぶ。 複合体を解体し、関与してきた人間の責任を明らかにすべき、と主張する。 いっぽう「日本原子力学会」は「事故原因の究明に関して個人の責任追及を目的にすべきでない」とする声明を発表している。 ▼第五章「脱原発は可能だ」:イデオロギーでも感情でもなく、将来世代へ膨大なコストを残さないよう、「市民の責任ある関与」を提唱する。(2013.02)

楠戸伊緒里『放射性廃棄物の憂鬱』祥伝社新書
著者はかつて動燃で高レベル放射性廃棄物の地層処分に関連して金属容器の開発に関わっていた。バックエンドに焦点を絞って細かく書かれた本は珍しい。 ▼放射性廃棄物は、かつて海洋投棄が広く行われていたが、ロンドン条約により1975年から高レベル放射性廃棄物の海洋投棄が禁止となり、93年からは低レベルを含めてすべての放射性廃棄物が禁止となった。 超ウラン元素(TRU)廃棄物、高レベル放射性廃棄物が地層処分の対象となっている。地層処分の研究開発は1976年以降、JAEA(旧・動燃)が行い、実施主体としてはNUMO(原子力発電環境整備機構)が担うことになっている。が、なかなか進展していない。 2010年末の使用済燃料を全部再処理すると約2万4千本のガラス固化体になる。原発の運転を続ければ、年間1300本づつ増える。 ガラス固化体は30〜50年冷やしてから地層処分する。放射能がウラン鉱石と同じレベルまで下がるのに数万年かかる。 ▼「オンカロ」のフィンランドをはじめ、米英独仏露、スウェーデン、中国、韓国など、各国の取り組みや歴史を紹介している。原発に賛成反対といった態度を示さず、淡々と事実を示す。ホルミシスについては変な記述があったが、そこにはあえて目をつぶっても、一読の価値がある。(2013.02)

朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠3』Gakken
第13章:病院、奮戦す。一時、入院患者が避難しなかったから補償は出ない、病院に補償を求めるように、と東電から説明があったとのこと。(後に撤回)  第14章:吹き流しの町。今回の事故で唯一安定ヨウ素剤を住民に服用させたのは原発から45キロ西の三春町だ。県からは「誰の指示で配っているんだ。すぐに回収しろ」という電話があったという。 第15章:除染の悩み。環境省と福島県が合同でつくった「除染情報プラザ」のスタッフは、実は全員が派遣会社「パソナ」から派遣された契約社員だった。 第16章:カワセミ日記。原発から33キロの飯館村長泥地区。3.16に測定された空間線量率は90μSv/hを超えていた。現地から原子力安全委員会への問い合わせに対する回答は、測定器を洗浄して測りなおせ、というものだった。 第17章:がれきの行方。環境省は広域処理を言い出したが、じつは放射能汚染は念頭になかった。巨額の予算を組んで電通と博報堂にマスコミ対策・宣撫工作を委託している。 第18章:地底をねらえ。核廃棄物の最終処分を担うNUMOだが、なにひとつ成果をあげていない。役所や電力会社からの出向の人員、莫大な予算を使った広報は広告会社への外注。六ヶ所村の再処理工場は、原発を止めないために、使用済み核燃料を受け入れるために存在する。が、容量の残りはわずか。(2013.02) → @ A


山秋真『原発をつくらせない人びと』岩波新書
著者は留学先のアメリカでスリーマイル島を訪ねたのがきっかけになり、その後原発計画にゆれる珠洲に通うようになった。珠洲の計画凍結後、上関原発に反対して粘り強く活動している祝島に通う。 2010年末時点で日本には54基の原発があったが、「1970年までに計画が浮上したものに限られる」 。計画があったがつくらせなかった場所は30ヵ所以上ある。 ▼祝島では30年以上にわたって、週1回以上のデモを行っている。 日本におけるスラップ訴訟の草分けとでも言うべき攻撃が繰り返され、 身内でもスイシンとハンタイで背を向け合うという現実がある。けっしてキレイゴトでは済まない。 ▼東日本大震災と東電の事故を受け、一時は原発建設の歩みが止まったかに見えたが、安倍政権の成立とともに、またまた風向きが変わってきた。まるで福島では何も問題が生じていないかのように、あるいは、福島の事件はSF小説の一場面かのように扱われ、原発推進に先祖がえりしようとしている。(2013.03)

ジョセフ・ジェームズ・マンガーノ(戸田清、竹野内真理・訳)『原発閉鎖が子どもを救う』緑風出版
大学の先輩から、読んでごらん、と送られてきた。じつに多くのことが書かれていて、すらすらとは読めなかった。 ▼1958年〜1970年、「セントルイス委員会」が乳歯中のストロンチウム90を調査し、核実験との相関関係を立証した。測定機器の限界から、条件の共通する乳歯のグループごとにまとめて検査した。汚染のピークは1964年生まれの子供達だった。前歯より臼歯のほうが濃度が高く、核実験以前に生まれた子どもに比べて20倍〜80倍の負荷がかかっている。60年代末にはピーク時の半分以下になる。 小児癌の発生率、死亡数がSr90と平行して変化していた。しかし、彼らは、あえてストロンチウム汚染から健康被害を推測せず、汚染の広がりを訴えた。1963年、米国で核実験停止条約が批准され、「セントルイス委員会の主要な目標が事実上消滅した」ため、1967年、名称を「環境情報委員会」に変更。乳歯の研究は続けられ、1970年までに30万本以上の歯が収集された。 ▼1992年になって、米国国立ガン研究所の研究結果が公表された。ネバダ核実験に由来するヨウ素131により1万1000人〜21万2000人が甲状腺ガンに罹った可能性がある、とする内容だった。内部からの告発により、しぶしぶ公開したもの。これに限らず、政府は核実験による健康被害を把握していながら隠蔽していた。 ▼1995年、「放射線と公衆衛生プロジェクト(RPHP)」が発足。1996年〜2006年、「歯の妖精プロジェクト」に取り組んだ。原発周辺での放射能汚染を知るために乳歯を集めた。セントルイス委員会の時代と異なり、1本の歯ごとに計測が可能になった。 原発の運転とSr90濃度は相関し、小児のガン発症と相関していた。 このプロジェクトに対して、「ジャンク・サイエンスだ」などと執拗な攻撃が加えられ、補助金が次々に取り消されるなどの試練にあう。 ▼2001年6月、セントルイス委員会の集めた乳歯がワシントン大学に保管されているのが見つかり、これがRPHPに引き継がれることになった。乳歯は8万5千人分以上があり、それぞれ提供者を特定しうるカードが付いていた。これは追跡調査の有力な材料になることが期待されたが、実現には至らなかった。 ▼米国は、国内で多大な核実験(広島型1万発分)を行い、多くの原発を建設し、スリーマイルでは事故(1979)も起きた。米国もまた「被ばく国」である。セントルイス委員会の事跡、RPHPの事跡は、市民と科学者が手を携えての、新しい運動の形を示した。いっぽうで、反原爆、反原発という国策に反する運動の困難さも教えている。 ▼乳歯を扱う運動でありながら、不思議なくらい歯科医の影が薄い。乳歯を集めるのに大変な苦労をしたらしいのだが、多くの歯科医が積極的に協力していれば、もっとやりやすかっただろうに、と思う。 ▼訳者・竹野内さんは、あとがきで日本での乳歯調査を呼びかけている。 (2013.03)  参考→市民と科学者の内部被曝問題研究会(ACSIR)

週刊朝日『機密ファイル「K」の驚愕 原子力ムラ不実の裏工作を暴く』WEB新書
1996年1月13日、動燃の総務部次長で、「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故の内部調査を担当していた西村成生氏(当時49歳)が謎の死を遂げた。彼の残したダンボール5箱分の膨大な資料。そこには住民を洗脳し懐柔するための、驚くべき工作の記録が残されていた。住民の敵対意識の程度や、家族関係、親戚関係、上司や取引先などを調べている。とくに反対派住民は詳しく調べてある。反対派には、徹底的に孤立化させる工作が行われた。後半は人形峠の後始末のための「K機関」(のちに「Kチーム」)について。青年会議所の利用、タレントの活用、新聞投書の要領と各部署への割り当て、などなど。さらにはトンネル会社を作って協力者を雇用し、社員や役員を厚遇する。当事者の一人は、電力会社にやり方を教えてもらった、と証言している。(2013.03)

朝日新聞『現場からいちはやく記者が消えた!原発とメディア』WEB新書
震災から1ヶ月後、JMATに加わっていわき市へ行ったとき、現地の人が「マスコミが逃げた、現地の状況が報道されない」と憤慨していた。正直なところ「まさか」と聞き流していた。しかし、のちにETV取材班が原発の30km圏内に入ったことで、取材を中止して帰社するよう命令を受け、始末書を書かされたことを知った。▼3月12日、朝日新聞本社から「半径30K圏内に立ち入らないように」と指示があり、1号機爆発後、「いわき支局の記者は郡山支局に移動せよ」と指示。現場近くから記者が消えた。 ▼雲仙普賢岳の事故がトラウマになっているという。1991.06.03、報道カメラマン16人と運転手や消防団員など計43人が大火砕流の犠牲になった。住民が危険な取材の巻き添えになった、と非難された。 ▼一般人に許容される被ばく線量は年間1ミリシーベルト。朝日新聞社にかぎらず、各社はこれを基準に記者を現場から退避させた。一方で、政府や公的機関の発表する「安心」情報を、無批判に報道した。このようなダブルスタンダードは許されるものではない。事故から1ヶ月以上たってから、ようやく30キロ圏内での取材を認めた。 2011.07.13、朝日新聞は1面に「提言・原発ゼロ社会」という記事を掲載し、いままでの原発容認の姿勢を転換した。 (2013.03)


真山仁『地熱が日本を救う』角川学芸出版
原発は「ベースロード電源」に向いているが、リスクとコストを考えると、とても割に合うものではない。地熱発電は自然エネルギーであるにかかわらずベースロードに向いている。 しかし、開発にかかる許認可、時間と費用などはマイナス要因で、しかも、各種電源のなかで、国による開発支援がおろそかにされてきた。そのため、世界3位の資源量とトップクラスの技術を活かせていない。 (2013.04)

週刊朝日『機密ファイル「N」の衝撃 霞ヶ関官僚は「やらせ抗議」を指示した』WEB新書
機密ファイル「K」の驚愕』の続編。「T・N」と作成者のイニシャルの記されたファイルによる。 国の研究機関である動燃が、組織ぐるみの選挙運動をしていた実態が細かく記録されている。 ▼1993年に放送されたNHKスペシャル「プルトニウム大国・日本」に対し、科学技術庁原子力局長らが担当ディレクターや記者を呼びつけて抗議した。さらに科技庁から動燃に、「やらせ抗議」の指示があったことが記録されている。動燃の各部署や管理職に、抗議先の住所電話番号などとともに抗議の「例文」までがFAXで伝達された。(2013.04)

朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠4』GAKKEN
第19章:残された人々。障がい者は避難行動ができなかったり、避難所では生活できなかったりといった事情で、自宅に残るケースが少なくなかった。JMATで被災地へ行ったとき、不自然に感じたが、やはり自宅にこもっていたのだ。 第20章:飛び出した町。福島県双葉町は埼玉県加須市の旧高校校舎に町役場ごと移動した。1号炉の爆発により「死の灰」をあびた井戸川町長が決断した。第21章:遠野ショック。原発から200キロの地で基準値超えの放射能汚染。遠野では放牧ができなくなった。第22章:また年を越す。「いきがい」をもって、人生をかけて作り上げてきた「なりわい」がつぶされる。金銭では補償できない。第23章:日本への不信。3/16米国務次官補のカート・キャンベルが駐米大使、藤崎一郎を呼び出した。「原発事故に、日本政府は真剣に対応していない」、「日本政府の全力を挙げた対応が必要だ。東京電力の問題ではない。国家の問題だ」、「数百人の英雄的な犠牲が必要になってくる。すぐに行動を起こさないといけない」と詰め寄った。第24章:「影」が動いた。700人からなる自衛隊中央即応連隊に対し、緊急事態発生時の東電社員救出作戦が命じられた。 (2013.04)

朝日新聞『フクシマ安全神話の罪深さ「政府原発事故調」最終報告を分析する』WEB新書
政府事故調の報告を中心に、国会事故調、民間事故調、東電の4つの調査報告を比較検討している。畑村洋太郎委員長の現場主義、再現実験などはかなわなかった。「事故原因の究明も被害の全容をつかむ調査も…始まったばかりだ」…調査の継続、立ち入り可能になったら徹底的な現地調査を行うよう求めている。畑村氏の言葉〜「あり得ることは起こる。あり得ないと思うことも起こる」「見たくないものは見えない。見たいものが見える」「形を作っただけでは機能しない」 (2013.04)

週刊朝日『機密ファイル「N」最終章 もんじゅ事故「隠蔽」記録と謎の死』WEB新書
「機密ファイル」シリーズの3冊目。もんじゅのナトリウム漏れ事故のビデオのうち1本は存在そのものを隠し、もう1本は不都合な部分を削除し編集して公開した。現場を写したポラロイド写真はシュレッダーにかけて処分した。内部調査を担当していた西村成夫氏は記者会見の翌日、動燃本社からのファックス5枚を受け取った直後に遺書を書いて自殺した、とされている。そのファックスは見つかっていない。(2013.04)


澤田哲生『御用学者と呼ばれて』双葉新書
つぎつぎと「学者」が脱落していくなかで、最後までマスコミに出続けていた「赤めがね」の学者である。自分は地位も金ももらっていない、「御用」学者ではない、あえていうなら擁護(「ごよう」でなく「ようご」)学者だという。「ガチガチの原発推進派」を自認する。原子力平和利用と核兵器廃絶の両立が著者の夢であるらしい。 ▼ネットでの不確かな情報の拡散を「反原発」の専売のように批判するが、原発推進の側も同じようなことをやっている。立ち位置の問題ではない。「メルトダウン」の用語の批判に10ページ余を割いている。メルトダウン、再臨界、核爆発、などを妙に誤解しているように描きだすが、シロウトだってそんなにバカじゃないと思う。 ▼原発のコントロールは可能、コスト的にも見合う、との考えから出発している。絶対安全はありえないが、事故の可能性を押さえ、事故が起きた場合でも影響を最小限にすることで、利用すべきエネルギーだという。原子力ムラ批判に相当のスペースを割いている。そのうちにムラ八分になるのでは?  ▼以前に「めがね」から抱いた印象よりは真面目な人物らしい。「ムラ」の住人との違いを強調するが、「専門」という杓子定規からか、どこかズレているような気がしてならない。(2013.05)

スウェーデン共同プロジェクト『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』合同出版
スウェーデンの農業庁の委託により国防軍研究局が中心になって、スウェーデン農業大学、食品庁、放射線防護庁の協力の下にまとめられた本。読者としては防災計画の策定や訓練、実際に災害対策に関わるであろう現場の人を想定している。 ▼被災直後の歴史に残る「情報をめぐる大混乱」を繰り返し指摘している。「行政当局は…国民に不安を与えることを危惧して、情報発信を躊躇する場合がある…むしろ多くの場合、十分に情報が得られないことが、大きな不安を呼び起こす」(18p)…政府発行の文書ではあるが、率直に反省している。 ▼牛乳を例に、汚染への考え方を示す。すなわち、薄めて基準をクリアしても、集団として考えると放射能の総量は変わらないから集団的リスクは変わらない。汚染したものは廃棄し、拡散させない、というのが原則である。わが国の環境省は?… ▼物理的半減期、生物学的半減期、それを組み合わせた実効半減期、ここまではよく耳にする。この本では加えて「生態学的半減期」という概念を示している。空間と地面の放射能を調べて、それでよしとするのではなく、じつに木目細かに生態系を形成する動植物の研究をしている。日本の研究者にも、見習ってほしいところだ。 ▼訳者らのあとがきのなかで、佐藤吉宗氏がスウェーデンの原発事情を紹介している。「2010年までに全廃」との国会決議は守られず、連立与党の中でも足並みはそろわない。佐藤氏はスウェーデン事情に詳しく、ブログは以前にも参考にさせていただいた。(2013.05)

ロム・インターナショナル『日本のモノづくり力はやっぱり凄い』河出書房新社
スーパーカブから始まって51件の「ニッポン発で世界初」を紹介している。「カニカマ」がヨーロッパで売れている、リポビタンDが東南アジアで売れている、ヤクルトが南米で売れている、なんてのは面白い。 この国が世界に恥じるべき原発事故を起こし、なんとなく鬱屈した気分なので、こんな本をざっと読むのも心地よい。(2013.05)


柴田明夫『日本は世界一の「水資源・水技術」大国』講談社+α新書
「バーチャルウォーター」1990年代前半から使われる言葉。穀物1トンは水2000トンを使用する。2000年度の日本のバーチャルウォーターの総輸入量は640億立方メートル。中国を日本の水技術輸出先として有力視しているみたいだが、ハード的な面より、社会システムの障壁が足を引っ張りそうだ。(2013.06)


永幡嘉之『巨大津波は生態系をどう変えたか』講談社
著者は「自然写真家」として、山形に居住し、動植物の調査と記録、保全に取り組んでいる。とくに昆虫の生態にくわしく、じつに細かに観察している。津波による影響は、塩害、砂浜の消失、池や湿地の消失などがあるが、それ以前に、人間のせいですでに「細切れ状態の生態系」だった。そこに津波が襲った。海岸に広葉樹の自然林をつくろうという宮脇昭氏らの提案を名指しはしないが批判している。生態系は森林だけで成り立つものではない。最後の部分で、「非常時」という掛け声のもとで、自然環境の回復や保全は後回しにされている、と嘆いている。(2013.07)

朝日新聞『プロメテウスの罠 第28部 原発維持せよ「本当のコストは?」』WEB新書
何人かの元官僚にスポットを当てている。 ▽木村雅昭、震災時に資源エネルギー庁次長だった。原発事故直後に原発維持を唱え、菅内閣の「脱原発」と鋭く対立した。その後、エルピーダメモリ株のインサイダー取引で起訴され休職中。 ▽2012年、経産省審議官から安倍首相の秘書官になった柳瀬唯夫。2004年3月、経産省の若手官僚らが「19兆円の請求書」という文書を作成し、核燃料サイクルに異を唱えたときの原子力政策課長であり、再処理路線継続に力を尽くした。 ▽「19兆円」にかかわり、経産省を辞めていた伊原智人。菅内閣の国家戦略室「企画調整官」として復活した。立命館大学の大島堅一氏らとともに「原発のコスト」を検証した。政権交代後、退官。 ▽望月晴文、2010年に経産省事務次官を退官し、のちに日立製作所の社外取締役、日本生命保険特別顧問。「原子力ルネッサンス懇談会」の中心となる。 ……政・官・財の原発人脈はとてつもなく強力だ。(2013.07)

小谷正博ほか『原子力災害からいのちを守る科学』岩波ジュニア新書
4人の著者が、物理学、化学、生物学など、それぞれ分担して基本的な事柄を解説する。 「この本には結論はありません。ある結論を、あなたに押しつけようとは思いません。あなたがこの本で学んだことをもとに、自分で考えていただきたいのです」(序章)  元素の周期表から始まって、物理・化学・生物学などを解説している。こういうコンセプトには共感をもつ。 ……しかし、あれ?と思う記述があって気になった。 ▼福島第一原発で「水蒸気爆発も起こりました」と記述がある(89p)。3号炉の爆発は水素爆発ではなく水蒸気爆発ではないかと指摘されているが、国や東電は認めていない。この「公式見解」に異を唱えるのはいいが、論拠を示す必要があるだろう。でないと「自分で考える」にも手がかりがない。 ▼高速増殖炉もんじゅのMOX燃料とプルサーマルの原子炉で使うMOX燃料を、同一であるように記述して(85p)いる。 プルトニウムの混合割合を富化度といい、プルサーマルで使われるMOX燃料は富化度が4〜9%、高速増殖炉では20〜30%となる。 たしかに「同種」ではあるが、これだけの違いのあるものを区別しないで記述するのはどうかと思う。 ▼「ベクレル」の解説では、この本に限らず、「放射線の数」「放射線の強さ」という記述が多い。「崩壊」または「壊変」を説明しだすと難解になるので避けているのだろうか。特定の核種に絞った議論ならそれでもいいが、異なる核種の1ベクレルどうしを比較しても同じではない。たとえば、セシウム134、セシウム137は、いずれもベータ崩壊する核種だが、同一ベクレルの物質からの放射線量は、前者が後者の2倍以上となる。(→田崎氏の解説を参照) ▼期待が大きかっただけに残念な気分。(2013.07)


水野倫之『日本一わかりやすいエネルギー問題の教科書』講談社
著者はNHKの解説委員で、原発についてはかなり辛口の意見を述べている。 この本は福島県富岡町の小中学生から寄せられた質問を基にしている。 NHKに「エヌエイチケー」とルビが振ってある。わずらわしいほど漢字にルビが振ってあるのは、そういった読者層を想定してのことだろう。 エネルギー一般、原発、地球温暖化、自然エネルギーと4章からなる。 「人間ひとりが呼吸するときにはきだす二酸化炭素は、年間およそ320キログラムにもなり、それを吸収するためには、23本のスギの成木が必要です」 (2013.08)

肥田舜太郎『被爆と被曝』幻冬舎新書
95歳を過ぎて、本を書こうとする元気に脱帽。「どっちみち、放射線にやられちゃったんだ。くよくよしないで、腹をくくって開き直って生きなさい」と言い、「手遅れだ」と嘆くのではなく、被害を最小限にする努力をしよう、と呼びかける。前半は養生訓っぽい。@内部被曝は避けられないと腹を決める A生まれもった免疫力を保つ努力をする B一番大事なのは早寝早起き C毎日3回、規則正しく食事をする D腸から栄養が吸収されるよう、よく噛んで食べる E体に悪いといわれていることはやらない F世界でたった一つしかない自分の命を大切にして生きる ▼後半で、原爆症研究の歴史が語られている。最後の生き証人と言っていいだろう。1968年「核兵器白書(ウ・タント報告)」には、「死者数、両市で6万人」「二次被爆の被害なし」「生存被爆者はすべて健康」と記述され、被害を過小に評価していた。1975年、国連を訪れた「国民代表団」は、この内容を知り、翌年に資料を提出し、翌々年には国連のシンポジウムを開催し修正させた。著者は、そのときの代表団の一員であった。 内部被曝の危険性について、米国は「本当は知っている」が、日本政府は「本当に知らない」と評している。 (2013.08)


堤未果『(株)貧困大国アメリカ』岩波新書
オバマは「フードスタンプ大統領」とも呼ばれているという。昔の「フードスタンプ」は、今はSNAPと称され、国民の7人に1人が利用し、2011年のSNAP支出額は7兆5千億円にもなる。SNAPは食品業界にとってドル箱になっている。そこに象徴される、この国の権力構造を根底から変質させているもう一つの巨大な流れがある、と説き起こす。 ▼第1章:株式会社奴隷農場。農業への株式会社参入が招いた悲惨な結果。老後の生活を襲う「デッドトラップ」(借金の罠)。アメリカ中の農家が巨大な企業の下請けになってきている。「まるで現代版農奴制」と評する。 ▼第2章:巨大な食品ピラミッド。レーガン政権下で独占禁止法規制緩和が行われた。食品販売では、全米の5割をスーパーチェーン上位4社で占めている。アグリビジネス、食品ビジネスと政府との間で「回転ドア人事」が広がっている。 2013.3.28成立した「包括予算割り当て法案、第735条」別名「モンサント保護法」〜 『遺伝子組み替え作物で消費者の健康や環境に被害が出ても、因果関係が証明されない限り、司法が種子の販売や植栽停止をさせることは不可とする』 ▼第3章:GM種子で世界を支配する。イラク戦争による8年間の占領のあと、イラクの「主権」を握ったのは多国籍企業、とりわけアグリビジネス(農産複合体)だった。法人税、関税など、多国籍企業優遇の施策が、土着の産業を押しつぶしていった。「TPP」の未来を暗示している。CPA81令なる命令は、農作物の特許権を規定し、採種し種子を保存したり、交配することは違法行為となった。 ▼第4章:切り売りされる公共サービス。冒頭にデトロイトの警察官が配っている「ようこそ全米1危険な町へ!」というチラシが紹介されている。財政破綻のために治安が悪化しているが、警察官は削減されている。全米で、公立学校の廃止=チャータースクール(営利学校)化が広がっている。このチャータースクールは投資家には人気の分野であるらしい。公共サービスの切捨ては、いっぽうで格差拡大と表裏一体になっている。 ハリケーン・カトリーナのあと、富裕層が集まって、人口10万人の「完全民間経営自治体サンディ・スプリングス」が誕生した。 「そこにはもはや「公共」という概念は、存在しない」 ▼第5章:政治とマスコミも買ってしまえ。2012.2.26フロリダ州で黒人少年が射殺され、犯人の白人が「正当防衛」として不起訴になった。「正当防衛法」という法律のせいだ。同じ法律は32州で導入されている。銃の売上が増加し、殺人事件も急増している。そのバックにALEC(米国立法交流評議会)というNPO組織がある。保守系の地方議員を中心に企業も参加している。「通常のロビイストや政治団体よりもはるかに強大な力を持つ」。米国の囚人人口は1970〜2010の40年で7.7倍に増加し、いまや600万人を超えている。超低給の囚人労働を民間企業や公共事業に利用する道を開いたのもALECであった。 ▼エピローグ。米国でおきていることは、やがてTPPなどの国際条約を通して、日本や世界各国にやってくるだろう。 「いま世界で進行している出来事は、単なる新自由主義や社会主義を超えた、ポスト資本主義の新しい枠組み『コーポラティズム』(政治と企業の癒着主義)にほかならない」。「略奪型ビジネスモデル」においては国家さえ市場のひとつにすぎない。国単位では対抗できないレベルの問題になっている。世界中の「99%」が手を結ぶことの重要性を強調している。 前著「ルポ・貧困大国アメリカ」、「ルポ貧困大国アメリカU」の完結編と位置づけている。(2013.09)

菅谷昭『原発事故と甲状腺がん』幻冬舎新書
著者は甲状腺外科を専門とする医師であり、信州大学助教授を辞してチェルノブイリ事故後のベラルーシに渡り、現在は長野県松本市長。 ▼2011年3月にひらかれた内閣府食品安全委員会でのエピソードを記している。「甲状腺がんは、たちがいいからそれほど心配しなくても大丈夫」という意見がでて、反論したという。当時、いろんな場で、甲状腺がんの「安全性」が語られた。命の危険を恐れ、大がかりな手術を受け、一生ホルモン剤を飲み続けなければならない子供らにたいして、余りに無神経な「専門家」が多いことにあきれたものだ。 ▼ヨウ素131は物理的半減期が8日と短く、被曝の時期が限られることから、疾病との因果関係が証明しやすかった。チェルノブイリでは、0〜4歳で被曝した子供にとくに多く発症している。小児では成人とはヨウ素の代謝スピードが異なり、より大きな被曝をもたらす。0歳児で大人の21倍、1歳児で15倍の被曝となる。甲状腺がんは、事故から4年目に急増し、9年目にピークを迎えている。約10年間で、平常時の70倍もの発症がみられた。ピークをすぎた後も長期にわたって発症がみられる。被曝時年齢が高いほど遅れて発症する。なお、事故から2年目、3年目でも平常時の2〜3倍の増加がみられた。 ▼ヨウ素131によって甲状腺がんだけではなく、機能低下も発症する。ところが福島県の検査では甲状腺がんだけにしぼった検査をしている。また、白血球分画の検査をしていながら結果を発表しない。これでは不信感が強まるばかりだ。 ▼IAEAが認めた健康被害は甲状腺がんだけだが、ベラルーシでは広範な健康障害が観察されている。 低出生体重児、先天異常の増加。子どもたちの体力の著しい低下。原因不明の「チェルノブイリ・エイズ」が激増 (エイズウィルスによるものではなく、免疫機能・造血機能の低下を指している)。 甲状腺以外のがんはもとより、消化器疾患や心臓疾患など、広範囲の疾病が増加している。特に心臓の「心室内伝道障害」は放射性セシウムの体内濃度に比例して発症し、「セシウム心筋症」と呼ばれる。 ▼東海村の臨界事故でも、いっときは大騒ぎしたけれども、じきに「原発安全神話」が息を吹き返す。著者は「悪性反復性健忘症」と称して警告していたが、福島原発事故のあとの国や報道の状況を見て、「難治性」を付け加え「難治性悪性反復性健忘症」とよぶことにした、という。 (2013.09)

中沢啓治『はだしのゲン わたしの遺書』朝日学生新聞社
「原爆漫画をかこうなんて、これっぽっちも思ったことがありませんでした‥逆に原爆のことは忘れたい、被爆したことは人に言うまい、と思って生きていました」 ▼転機となったのは60歳の母の死だった。「それまでは原爆のことから逃げ回ってばかりいましたが、おふくろの死で開き直った。おふくろの弔い合戦をやってやろう。おやじ、弟、そして生後4ヶ月で死んだ妹のうらみを晴らしてやるぞ。」 しかし、なかなか掲載する出版社がなくて苦労する。「はだしのゲン」は、1973年から少年ジャンプで連載が始まり、中断したあと、いくつかの出版社を転々としながら第2部までができた。▼第3部の構想も抱いていたが、自分自身の病気のために断念した。糖尿病と白内障は被爆者に多く見られる病気である。「被ばくのシーンがリアルだとよく言われますが、本当は、もっともっとリアルにかきたかったのです。けれど、回を追うごとに読者から『気持ち悪い』という声が出だし、ぼくは本当は心外なんだけど、読者にそっぽを向かれては意味がないと思い、かなり表現をゆるめ、極力残酷さを薄めるようにしてかきました」「描写をゆるめてかくことは本当はしたくなかったのです」。県内の被ばく者の話でも、これらの画面にはちっとも誇張はなく、現実はもっとひどいものだった、という。 ▼いまや各国語に翻訳して出版され広く読まれている。今年の夏、松江市教育委員会が学校での「はだしのゲン」を子供が自由に閲覧できない「閉架」の措置を取るよう指示していたことが話題になった。「残酷なシーン」を理由にしているが、いきさつをみると、天皇を痛烈に批判したり、軍を批判していることが右翼団体の標的にされたようだ。(2013.09)

朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠5』Gakken
第25章:海鷹丸が来た。原発前の港湾では、2012年暮れにセシウムが25万ベクレル、13年2月末には51万ベクレルの魚が見つかった。 第26章:生徒はどこだ。生徒が自発的に始めた携帯メールが力を発揮する。 第27章:いのちの記録。曲折を経ながらもペットの保護は進展する。いっぽう、家畜は殺処分。 第28章:原発維持せよ。事故直後から、経産省官僚は原発を守るために動き始め、4月上旬に「エネルギー政策の見直しについて」と題するレポートを仕上げる。菅内閣の内閣審議官・下村健一は、「カルト宗教のようなにおいを感じたと」いう。この章についてはWEB新書も参照。 第29章:家が買えない。避難して、家を買うと慰謝料が打ち切られるケースが続出した。原発避難者は「元の場所に戻れる」という前提なので、ダムの底に沈む場合の公共用地の補償基準は適用されない。戻る意志がないものとして慰謝料までもが査定される。 第30章:テロ大丈夫か。9.11テロを受けて米国では「B5b」という原発のテロ対策が採られ、日本にも伝えられていた。米国のNGOが発表した「核物質の安全に関する指標」では、評価対象32カ国のうち、日本は23位。日本は核管理の後進国と見られている。 テロを含む過酷事故に備えるのが当たり前であり、コスト増を理由に忌避するような国は原発を持つべきではない、というのが欧米の常識であるらしい。 (2013.09)


週刊朝日『食の安全神話を疑う』(WEB新書)
国の食品の検査ではきわめて薄く広くサンプリングしている。きめこまかに検査すると、ときに濃度の高いものが検出される。福島県産のものより、むしろ近隣の地域のもののほうが高く出ることが多い。地元では、相応に対策に気を配っているからだ。▼国はWBCで十分としているが、尿検査のほうが感度が高い。とりわけストロンチウムなどのベータ線しか出さない核種はWBCでは検出できない。きちんとした検査体系を見直すべきであろう。▼海洋汚染は止まっていない。それが科学的な常識であって、少しづつ漏らすのは「コントロール下」だという詭弁は国際的には通用しない、奇弁と笑われるのがオチだ。それどころか、急ごしらえの脆弱なタンク群、かろうじて冷却している1〜3号炉、とてつもなく大量の使用済み核燃料……薄氷を踏む思いだ。(2013.10)

朝日新聞『東電の汚れ役は見返りと共に』(WEB新書)
水谷建設元会長の「爆弾発言」をもとに取材している。 1990年代、福島第一原発に7,8号機を増設するため、「Jヴィレッジ(浜通り地区)」、「エルミタージュ美術館分館(会津地区)」、「サッカースタジアム(中通り地区)」が計画された。東電の寄付により130億円かけてJヴィレッジが97年オープンしたが、他は未完のまま福島第一の事故により頓挫した。 「原発立地対策」に湯水のように金を使い、ゼネコンなどが、本体工事の受注を狙って協力する。こういう構造は福島に限ったことではない。(2013.10)

今西憲之+週刊朝日取材班『原子力ムラの陰謀』朝日新聞出版
動燃(現・日本原子力研究開発機構=JAEA)の総務部次長だった西村成生(にしむらしげお・享年49)が残したダンボール7箱分の資料が出発点。 第1章:ウランの里「人形峠」で行われた戦慄の住民思想調査。 「西村ファイル」のうち「方面(かたも)地区住民資料」〜動燃職員による住民の「身上調査」、それにもとづく工作が行われた。 第2章:動燃裏工作部隊「K機関」を暴く。「K機関」(Kチーム)のトップは動燃理事長、以下本部の幹部や管理職が並ぶ。タレント利用では、竹村健一郎、石原慎太郎の名が挙げられている。 一般市民を装って新聞などに投書するよう指示し、マニュアルから、部署別のノルマ表まである。 第3章:梶山静六を大臣に押し上げた原子力ムラ組織ぐるみ選挙。 献金、票読みなど、みごとな組織ぐるみの選挙。 第4章:科学技術庁が指示したNHKへの「やらせ抗議」。 1993年5月放送の「NHKスペシャル・調査報告 プルトニウム大国・日本」… 放送の5日後にディレクターと記者が科技庁に呼びつけられ、原子力局長室で抗議を受けた。科技庁の意を受け、動燃は各部署に対NHK抗議を指示した。抗議の例文まで示しており、中には受信料不払いをほのめかす文言まである。 第5章:プルトニウム輸送船「あかつき丸」の日米密約。 フランスで再処理したプルトニウムを積んだ「あかつき丸」は1993.01.05東海村の港に入った。 第6章:動燃「工作」体質の起源。 原研の労組に共産党の影響が強まり、対抗して警察などとも協力して、スパイもどきの諜報工作が行われた。 第7章:「もんじゅ」事故前夜の「安全神話」。ナトリウムは絶対漏れない、たとえ漏れても万全の対策がとられている、と安全を強調していた。 第8章:もんじゅ事故「隠蔽」極秘記録と西村氏「怪死」の真相。 西村氏の怪死の以前から、「これ以上追求すると自殺者がでるかもしれない」との発言があった。遺族がおこした裁判は敗訴となったが、西村氏の遺書などに不自然がところが多く、他殺または自殺の強要が疑われる。 (2013.10)


「週刊SPA!」原発取材班『原発依存国家』扶桑社新書
現場の作業員は4次5次といった下請けが主体で、その待遇は劣悪。賃金は驚くほど安く、被ばくの管理もずさん。出勤し待機している間にも被曝しているが、現場に出ている間だけしか計測していない。解雇を避けるために被ばくを隠す作業員が多い。▼元原発検査員の藤原節男氏の話…3号機の爆発は、使用済み燃料プールで起きている。最初は水素爆発、つづいて臨界による核爆発が起きたと見ている。4号機の燃料プールの爆発は、3号機から配管を通じて水素が4号機建屋に入り込んだためと説明されているが、配管は断裂していて、その可能性はない。4号炉の燃料プールで水素が発生したと見るべきだ。▼原発のコスト、核廃棄物の処理に目をつぶり、原発を再稼動し、「世界一優秀な」原子炉を輸出するとまでいう。とても正気の沙汰と思えない政治がまかり通っている。(2013.11)

週刊朝日編集部・小泉耕平『東電4号機燃料棒の恐怖』WEB新書
2013年11月18日、4号炉燃料プールからの燃料棒取り出し作業が始まった。燃料棒は1533体ある。燃料プールは非常に危険な状態にある。燃料棒の取り出し作業もまた、大きな危険を伴う。4号炉だけでなく、1〜3号機のプールに約1500体の燃料棒があり、移送先の共用プールには6000体以上の燃料棒がすでに存在する。大地震、津波、テロなどが起きないことを神頼みするしかなさそうだ。 ▼泉田新潟県知事の話で、免震重要棟は中越地震の際の柏崎原発でのトラブルから、県が要請して造らせたものだとのこと。国の基準にはないもので、福島の免震重要棟が完成したのは震災の8ヶ月前だった。知事は、メルトダウンに備えるコアキャッチャーという設備が日本の原発では考慮されておらず、ひたすらメルトダウンが起こらない、と言い続けてきて、いまも言い続けていることを批判している。また、テロ対策の「B5b」がまったく顧慮されていないことも指摘している。 泉田知事の締めくくりの言葉〜「国民の皆さんは正しい情報さえ与えられれば、的確な判断ができるんです。情報を与えないで誘導するのでは、また同じ過ちを繰り返してしまう」 (2013.11)


津田敏秀『医学的根拠とは何か』岩波新書
「医学的根拠」には歴史的に三つある、という。@直感派、Aメカニズム派、B数量化派、と名づけている。1992年米国医師会雑誌に掲載されたワーキンググループの論文は「EBM宣言」(Evidence-Based Medicine)とも言うべきもので、そこでは統計学的な判断(疫学)を重視している。 疫学は4つの時期に分けられる。 (1)正規な概念や定義ができる以前の疫学(1880年以前) (2)早期の疫学(1880-1945年) (3)古典的・標準的疫学(1945年〜1970年代あるいは1980年代) (4)現代疫学(1970年代あるいは1980年代から現代に至る) ▼「100_シーベルト」が取り上げられている。ことさらに疫学の理論を持ち出すまでもなく、閾値のように扱う「専門家」の論理は成り立たない。もっと低レベルの被ばくで疾病が発症する例は、ほかにいくらでもある。統計的に有意差がなく「関連性が証明できない」場合に、「無関係であることが証明された」かのごとくに言う連中は救いがたい。 初歩的な誤りというよりは、意図的なものだろうから、よけいにタチが悪い。 ▼疫学的な関連があっても、個別の因果関係を証明するのは難しい、というのが普通の考え方かと思っていたら、著者はそうではないと主張する。このあたりは、よく理解できない。タバコや水俣病を巡って、実名を挙げて「学者」らを激しく攻撃する。あまりに攻撃的で、少し心配になる。 (2013.12)

青井未帆『憲法を守るのは誰か』幻冬舎
憲法の3原則は「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」である。「国家権力を制限し、人権を保障する」のが憲法の役割であり、その考え方が立憲主義である。 自民党の改憲案は国民の義務から説き起こす。国民主権ならぬ国家主権からスタートする。 ▼中世から近代への時代、権利の中心は「自由な経済活動」であった。やがて、経済的な自由は富める者の占有になっていく。20世紀になると、経済格差や貧困問題が大きく浮上し、経済的自由権を制約し国家が介入する、福祉国家が台頭してきた。 憲法の中には「公共の福祉に反しない限り」として、自由権を制限する表現がある。自民党の改憲案では、この但し書きが取り除かれている。 ▼戦時中の「防空法」や国が配布した「時局防空必携」が資料として提示されている。なかなか興味深い。空襲により多くの人が犠牲になったが、軍人、軍属でない限り、戦争による被害は補償されない。これは現在の法体系でも同じで、国からの委託を受けた者以外は補償の対象とならない。統治の合理性を人権に優先させる考え方が戦時には強まる。自民党改憲案では「国防軍」について規定があいまいで、「法律で定めるところにより」とする記述がやたら多い。 ▼明治憲法は不完全ながらも立憲主義を目指し、先進国の仲間入りをしようとしていた。 伊藤博文の言葉、「憲法政治と云えば即ち、君主権制限の意義なること明なり」「若し憲法に於て臣民の権利を列記せず、只責任のみを記載せば、憲法を設くるの必要なし」…その確たる立憲思想に驚かされる。 ▼「九六条改正先行論」が政治の世界に野火のごとく拡がった。憲法の何たるかを理解していないことに愕然とした、と著者は語る。→マガジン9 (2013.12)

藻谷浩介・NHK広島取材班『里山資本主義』角川書店
中国地区で放送されたドキュメンタリー番組が元になっている。 ▼100年かけて世界に拡がった「アメリカ型資本主義」が失速し、やくざな経済「マネー資本主義」がはびこり、「リーマンショック」として破局を迎えた。 20世紀型の鉄やコンクリートに満ちた「マッチョな経済」から「しなやかな経済」をめざすべき時代になった。 ▼マネーゲームに翻弄されたヨーロッパ諸国の中で、影響が最小限であった国、オーストリアを紹介している。木材資源を徹底利用して、「里山資本主義」を実現している。木材ペレットをフルに活用し、ペレットボイラーの効率化も進んでいる。薪ストーブの燃焼効率は60%〜ペレットボイラーは92〜93%と驚異的。また新建材CLTは、5階建ての建築が認められている。 ▼マネー資本主義の行き詰まりを解決するために、マネーゲームの覇者を目指し、公共投資の大盤振る舞い、金融緩和、周辺国には軍事力増強で毅然と臨む…行き詰まりの「マッチョな解決」が「アベノミクス」にほかならない。 ▼「マネー資本主義だけで世の中は回るものだという集団幻想に対し、現時点でささやかな異議を唱えること自体に、大きな意義がある」(あとがき) (2013.12)

日野行介『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』岩波新書
2012.10.3、毎日新聞は朝刊1面トップで「福島健康調査で秘密会」との大見出しの記事を掲載した。著者は毎日新聞記者であり、ちょっとした不自然な事実を発端に、隠蔽工作をスクープした。 ▼原発事故の影響を調べるための「県民健康管理調査」実施にあたって「検討委員会」が作られたが、1年半の間、「秘密会」を繰り返していた。公開の会合を持つ場合でも、事前に秘密の会議を持ち、公表の可否や発表方法を決めていた。会議の「シナリオ」を用意し、議事録の改ざんまでも行っていた。これらは「混乱を防ぐ」「不安を除く」という大義名分のもとに強引に行われた。 ▼事がおおやけになって、運営については改められた部分もあるが、基本的なところで、「甲状腺がん以外の健康被害はありえない」といったチェルノブイリテーゼの範囲内でしか考えようとせず、広範に住民の健康を守るという視点が欠落している。最後の章で、山下俊一教授への直接インタビューが載っている。こんな人が「専門家」として担ぎ出されたことに失望するしかない。(2013.12)

「心の網棚」と題して、読書録を作り続けて15年余が経った。「網棚」と名づけたのは、きっちりした「整理棚」ではなくやんわりしたもの、電車の網棚のように、ちょっと乗っけておいて、ともすれば忘れられがちな場所、といった意味だった。神棚でない、飾り物ではない、というコジツケもある。悟りに近づくどころではないけれど、阿弥陀にひっかけた洒落っ気も少しはある。▼あくまでも自分のためでありながら、他人に見られてもいいように記述する。というのも、明日の自分はもはや他人だと思ったほうがいい。コンピュータのシステム開発における「ドキュメンテーション」を意識している。それがなければバージョンアップはできない。▼還暦を過ぎた頃から、本を読むペースが落ち、この先、そんなに沢山の本は読めないだろう、と意識するようになった。自分のアタマのバージョンアップは、そろそろ打ち止めかと思う。読んだ本をいとおしむ気持ちが強くなった。そんなわけで、個々の本についての記述は長くなる傾向にある。じつのところ、それよりずっと多くのメモをとりながら読んでいる。そうしないとページをめくったとたんにアタマから消えていきそうで心配になる。そんな読書スタイルを、「介護保険第1号被保険者」「老齢基礎年金受給者」になったことを記念して書き留めておく。(2013.02)



 《2012|2013- 1011122014

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ダイモンジソウ(大文字草)