映画「いのちの山河」試写会に際して
2010.03.18
家の本棚から1冊の本を探してきました。
岩波新書『自分たちで生命を守った村』、1968年1月20日発行の初版本、大学生協のカバーがかかっています。はじめて沢内村に出会った本です。この本を手に取ると、さまざまな思い出がよみがえります。
私が大学に入ったのは1966年。この本を手にしたのは2年生のときです。
歯科技工士をしていた父に「歯科へ進まなければ学費はださない。仕送りはしない」と言い渡され、しぶしぶ歯学部に入りました。これでよかったのか、と悩み多い青年時代を送っていました。
そんな時期に、先の新書を読み、おなじ頃に学園祭で上映された同名の記録映画をみました。白黒の映画でしたが、最後に雪上車が雪煙をたてて進む場面が、カラーになったかのように見えたものでした。
沢内村というと、老人および乳幼児医療費無料化の発祥の地、という一面が強調されすぎるきらいがあります。深沢村長は人口5千人弱の村に3人の保健婦を雇いました。この比率でいくと、自分の住んでいる市町村で、どれだけの人数の保健婦を配置することになるのか、あとでゆっくり電卓をたたいてみてください。
医療費うんぬんよりも先に、住民の健康を守ることに注いだエネルギーに目を向けてほしいのです。その先頭にたったのが保健婦でした。本を読み、映画を見て、悩み多き青年は、保健婦にあこがれました。そのあげくに保健婦の女性と結婚することになりました。
沢内村の事跡は、行政と住民が一体になって健康づくりにとりくんだ「公衆衛生活動」の典型として全国に大きな影響を及ぼしました。いま、公衆・公共(パブリック)という概念が希薄になっています。
映画「いのちの山河」をご覧いただき、心にひびくものがあったら、6月の本上映には、回りの人をお誘いください。ぜひ自主上映を成功させたいと願っています。
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