BOOK2020  
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 《2019|2020- 1011122021



水島吉隆『写真で読む昭和史・太平洋戦争』日経新聞出版社
タイトルにあるように写真は確かに多く収載されているが、主体はあくまでも文章であり、写真集ではない。かなり細かく歴史的な記述がしてある。 ▼「南方作戦」が一段落し、戦争終結の機会をとらえる、という当初の構想は、勝利に沸く軍部の前に消えていった。海軍はオーストラリア占領など、戦線拡大を主張した。しかし、 ミッドウェー海戦、ガダルカナル島攻防戦〜と、太平洋戦争開始から1年足らずで劣勢に。 ▼戦争初期、日本中を沸かせた「戦捷祝勝会」についてのコラムがある。近年、サッカーやラグビーなどをめぐって、日本中が沸いている。こんな風潮というか国民性が危なっかしい。 ▼1941年4月からコメの配給制が始まった。戦後も食糧難から配給制が続いた。学生時代、「米穀通帳」を持って上京したものだ。手帳がなければ米が買えなかった。1969年に自主流通米が認められて、米穀通帳制度は形骸化。1982年に米穀通帳の発行は廃止となった。 ▼インパール作戦の牟田口廉也中将について、その無能ぶりが詳しく書かれている。こういう将校が重用される体制そのものにも問題はあっただろう。犠牲になった周りの将校や兵士にとっては命のかかる災難だった。 (2020.01)

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木下和寛『メディアは戦争にどうかかわってきたか』朝日新聞社
20世紀初頭の日露戦争から21世紀のイラク戦争まで、約百年の間の戦争とマスメディアの関係を扱う。 ▼日露戦争で日本は戦場での戦争には勝利したが、メディア戦争には敗れた。19世紀後半、国際的な通信網が敷設され、通信社が登場。「新聞」が世界で普及しはじめる。メディアが「世論」を作り、その影響力が増大していった。実戦でもメディア戦でも、電波が巨大な存在となったのが第二次世界大戦であった。 ▼戦後進駐した連合国軍総司令部は検閲を行った。原爆被害の報道を極力抑えようとした。 朝鮮戦争の初戦で敗走した米軍の様子を報じた特派員らに対し、利敵行為だとして圧迫を加えたことが逆効果になった。 ▼米国にとって朝鮮戦争は対メディアでの「挫折」だったが、ベトナム戦争は建国以来初めての「敗戦」だった。 1950年ころからテレビの出現によりメディアの影響力が強大になっていった。 活字メディアはテレビと支え合う形で影響力を維持した。 米政府・軍が受けた強烈なトラウマは、「ベトナム・シンドローム」と呼ばれるようになる。 ▼メディアと国家の力関係を逆転する流れをつくったのは英国のフォークランド戦争であり、頂点は湾岸戦争であった。さまざまなテクニックを用いて、軍は記者・カメラマンを統制下においた。独自の取材や批判的な報道は強く圧迫された。「今度の戦争で負けたのは、イラクとメディアだ」(ニューヨークタイムズ記者の弁)。 ▼イラク戦争の時代には、ブッシュJr.の開戦に至る政策の強引さもあって、米国政府の信頼が失われ、メディアが力を盛り返した。とくに、アルジャジーラのような新興メディアやインターネットが、大国の圧迫をすり抜けて現場を報道するようになった。このメディア戦略の失敗は「イラク戦争は第二のベトナム戦争だ」ともいわれる。 (2020.02)

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榎本博明『なぜイヤな記憶は消えないのか』角川新書
著者の開発した「自己物語法」と「記憶健康法」がテーマ。 ▼日々の経験を記憶に刻み、更新されていく記憶のことを、自伝的記憶という。「前向きに健康に生きるコツは、不健康な記憶を健康な記憶に置き換えていくことである」というが、そう簡単に「置き換え」られるものではないだろう。 ▼ポジティブな記憶はポジティブな気分を喚起する。ネガティブな記憶はネガティブな気分を喚起する。いっぽう、ネガティブな気分のときはネガティブな出来事の記憶が引き出されやすい。 これを「気分一致効果」といい、ネガティブな気分とネガティブな記憶の悪循環を生み出す。 ▼ネガティブな気分のときは、過去を振り返らずに、何か別のことに没頭するのがいい。運動、料理、手芸、整理・片づけ、読書、テレビ、スポーツ観戦などなど。また、自伝的記憶を引き出すためには、アルバム、日記帳、昔読んだ本、昔聴いた曲、旧友との語らいなどが有効だという。 ▼「自分史」を振り返って、できるだけネガティブにならないように整理して書き留める、という作業をしてみようかな、と思う。 (2020.03)

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青木理(おさむ)『情報隠蔽国家』河出書房新社
国の組織の中で、文書の隠ぺいや破棄、改ざんが横行している。いっぽうでソ連の崩壊などにより「反共」「防共」を眼目にしていた公安警察組織は、その存在意義を問われるような状況になった。「I・S」と称される組織がつくられ、政治家や高級官僚の情報を収集するようになった。 ▼小樽での銃器摘発の「おとり捜査」。1997.11 犯意なきロシア人に、高級車との交換を条件に、父親の遺品の拳銃を「密輸」させ、摘発した。隠ぺいではなくて捏造が行なわれている。 ▼著者はSNSを一切やらない、とのこと。炎上したりトラブルになったりするのを見て、これは「バカ発見装置」ではないか、と言う。 ▼終戦の直前、戦争に関する一切の文書や資料の焼却が命じられ、全国の市町村や軍事施設で膨大な資料が燃やされた。最終章は保阪正康氏との「対話」。政治的な立ち位置とは関係なく、国家の記録を残そうとしない傾向がつよい。保阪氏は「官僚制度の典型的な悪弊」と言う。 (2020.04)

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セバスチャン・ハフナー(瀬野文教訳)『ヒトラーとは何か』草思社文庫
ヒトラーの父親は、女中の私生児に生まれながら、高級役人にまでのぼりつめ、功なり名をとげて死んだ。 ヒトラーは、1889.4.20生まれ 1945.4.30 没。はじめの30年を「あやしげな生活無能者」として過ごし、後半の26年で「大物政治家」にのしあがった。 ▼あれこれと知れば知るほど、なぜこんな人物が国の頂点に立ったのだろうかと思う。右翼左翼を問わず、ありとらゆる不平不満をとりこみ、人気をたかめる。正当な手続きを踏んで「総統」に上り詰めたのだ。 ▼世界的にポピュリズムの波が広がっている現代、ヒトラーのような奇妙な人物が独裁者になっていきそうで、心配になる。(2020.05)

吉田裕『日本軍兵士』中公新書
歴史学の分野では、「開戦に至る経緯と終戦およびその後の占領政策に関する研究が盛ん」だが、戦争そのものを対象とした「戦史」の視点が不足している。新しい視点で、「戦史」を構成するのがこの本のテーマだとしている。 ▼戦地医療における歯科治療を取り上げている。 戦場では口腔清掃状態が悪く、齲蝕や歯周病が蔓延した。 年齢の高い召集兵が増え、義歯などの治療の必要性が高くなった。 陸軍は1940.3、海軍は1941から歯科医将校制度ができた。 前線の野戦病院に歯科軍医が配属されることはなく、召集された兵士のなかにいる歯科医が駆り出された。 ▼日露戦争では、日本陸軍の全戦没者のうちで戦病死者は26.3%、日中戦争初期の資料では50.4%と記録されている。 アジア・太平洋戦争期に関しては包括的な統計はほとんど残されていない。 ある部隊の資料では1944年以降は戦病死者が73.5%。「戦病死」には餓死、栄養失調が大きな比重を占める。 ▼「戦死」のなかでも「海没死」が35万人を超える。統計には表れないが、「自殺(自決)」や「処置」もかなりの数にのぼったとみられる。 ▼戦争の長期化、戦線の拡大とともに兵員数が拡大された。1945年の兵員数は1930年の30倍近くになっている。乙種合格の者や、いったん兵役を終えた「予備役」が徴兵され、さらには兵役検査の基準がゆるめられた。1944年には徴兵年齢が19歳に引き下げられた。 一方で「予科練」「特年兵」「少年海員」などの少年兵制度が拡大されていった。 ▼その他、装備や機械化の遅れ、ヒロポンの繁用、などなど、さまざまな問題を取り上げている。根本にあるのは国の意思決定システムの曖昧さのようだ。制度的な問題もあるが、国民性のようなものもあるのかもしれない。 (2020.05)

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嶌信彦『伝説となった日本兵捕虜』角川新書
1966.4.26、ウズベキスタンの首都タシケントで大地震が発生し、多くの建物が被害をうけたが、ナボイ劇場は無傷だった。これは日本人捕虜が建設したものだった。 ▼終戦後、満州・奉天の野戦航空修理廠の工兵が中心となって、400人余りの捕虜が建設にあたった。劇場建設という目に見える「目標」があったためか、部隊のまとまりは良かったようだ。その間のエピソードを綴ってある。 (2020.06)

大久保満男・飯島勝矢『オーラルフレイル』主婦の友社
著者:大久保=元日本歯科医師会会長、飯島=東大高齢社会総合研究機構教授。 ▼フレイルは「虚弱」の意味で、要介護状態までにはいたらない初期の機能低下を指す。ロコモティブシンドローム(通称「ロコモ」)は、運動器の障害により介助が必要なレベルを指すので、フレイルはその前駆的な段階である。 なお、サルコペニアは筋肉の萎縮だけを取り出した異常所見を指す。 オーラルフレイルは、口腔機能低下症→摂食嚥下障害と進む異常の初期症状という位置づけ。 ▼8020運動について。「平成元年(1989)歯科医師会が8020運動提唱」を強調しているが…  兵庫県佐用郡南光町(現・佐用町)で、1980年革新系町長・山田兼三氏が当選し、1983年歯科保健センター開設。そこでの新庄文明氏のフィールドワークから「8020」が提唱されたはずだ。そのことには一切触れていない。 ▼新庄先生は、大阪大学の医学部公衆衛生学教室に籍をおきながら、南光町で仕事をしていた。活動を見学させていただき、自宅に泊めて頂いたことがある。のちに長崎大学予防歯科教授となった。いまは退職して陶芸に打ち込んでおられる。(2020.06)   ⇒八〇二〇運動のふるさと

高見勝利『憲法改正とは何だろうか』岩波新書
「軟性憲法」が行き過ぎれば憲法の意味はなくなる。一方、「硬性憲法」が硬すぎると内戦や革命をもたらす危険を有する。(例:アメリカの南北戦争) 現憲法の成立過程や、その後の論議から、「改正手続き」のあり方を論じる。 ▼いつだったか、富山で開かれた憲法関連の集会で、迷彩服を着た右翼の人間が入りこんで発言したことがある。現憲法は正規の手続きに従って制定されたものではない。したがって無効であり、廃棄して明治憲法に戻すべきである、という主張であった。 ▼明治憲法では、憲法改正は天皇が発議し、議会(衆議院&貴族院)の3分の2以上の出席のもとで3分の2以上の評決による、とされていた。その憲法改正手続きに従って「全面改正」の形式で新憲法になったのではなかったか? ▼やたらと引用が多くて読みにくい。誰がどういう説をなしているか、ということは、学問の世界では重要かもしれないが、一般人にはどうでもいいことが多い。かえって論旨が読み取りにくくなる。 ▼最終章では、憲法改正発議に必要な議席を確保した安倍政権について考察している。 安倍の考え方は祖父の岸信介が説いた「日本精神」と軌を一にする、と評する。 また、内容よりも「憲法改正」という「手柄」を自己目的化している。安倍は、何事につけ信介じいさんのほうを向いて考えている。いや向いているだけで考えてはいないのかも。(2020.06)

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外岡秀俊『日本国憲法の価値』朝日新書
サブタイトルに「リベラリズムの系譜でみる」とある。日本では「リベラリズム」は「左派」という意味で使われるが、本来は左右、保守革新ではなく、「自由主義」や「個人主義」を擁護し、独裁や全体主義を批判する立場を指すという。 ▼「自由」と「平等」がリベラリズムの基軸であり、憲法で自由と平等を堅持することにより「健全な民主主義」を保つことができる。日本のリベラリズムの始祖は福沢諭吉だという。 ▼20世紀末以後、グローバル化、少子高齢化と一極集中化、IT化などの社会的な大きな変化があり、この先の世界の政治・社会の情勢を読みにくくしている。「アメリカの一極支配は終わりつつある。中国の覇権も長続きしない」という。 ▼先人の知恵に学ぶことは大切ではあろうが、内外の論者の引用・紹介が多く、読むのに疲れる。 (2020.07)

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フレッド・ピアス(多賀谷正子ほか訳)『世界の核被災地で起きたこと』原書房
著者はロンドンを拠点とする英国のジャーナリスト。徹底した現場主義者のようで、世界中を駆け回っている。日本語訳の本もけっこうたくさん出版されている。この本では、広島・長崎、福島はもとより核開発や核実験などで核による環境汚染を起こした17地域を取り上げている。 ▼核の問題では「核技術者の独善的な主張と、反核派のキャンペーンにおけるヒステリックな主張とは真っ向から対立してきた」と評し、どちらにも偏らず、双方の意見を紹介しようとしているようだ。 ▼低線量被曝については、少々甘い見方が気になる。著者は100msvあたりに「閾値」を認めるようだ。「事故による心身影響のほとんどが、避難の際の大混乱と、終わらない漂流生活のトラウマに起因」する、としている。 ▼福島にからんで、例のミスター100ミリシーベルト・山下俊一教授を取材している。「健康への影響は事実だが、その直接の原因は放射線ではない。本当の下手人は、事故がもたらした避難所生活とストレス、失業、社会秩序の崩壊だろう」と、山下教授の意見に引かれている。 ▼核施設の閉鎖・解体や核廃棄物の処理には、これぞという正解がない。どこの国も技術的、経済的な問題を解決し得ないでいる。核兵器開発の施設跡では、核廃棄物の処理が滞っている。 ▼原子力産業の将来については悲観的な見方をしているが、国による軍事的な動機がある以上、消滅することはないだろう。 ▼世界各地をとびまわる内容なので、いろんな地名がでてきて追いついていけない。せめてところどころに、簡単な地図を掲載してほしい。 (2020.08)

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朝日新聞社『原爆・五〇〇人の証言』朝日文庫
昭和42年に朝日新聞社が面接取材を行った記録。このころは、まだ被爆者の生の証言が多く得られた。いまとなっては貴重な記録だ。富山の被爆者団体の文集が、約30年前のものを元に再編集して昨年刊行されたが、ほとんどの人が「故人」と表記されている。 ▼思い出したくない、見たくない、と過去から離れようとする人もいる。 「あれから広島には一度もいきません。行ってみようという気もありません」 「原水禁運動などしなくても、人道上、当然、原水爆を使わないのがあたりまえじゃないか。そんな時間があったら、静かに寝て、生命を一日でもひきのばしたい」 ▼被爆者健康手帳はS32年からスタート。ほとんどの医療費が無料になる「特別手帳」と、検診だけの「一般手帳」に分けられる。S40秋、特別手帳の対象者の範囲が広がった。申請には証明のための証人探しなどで困難が伴う。 ▼原爆で家族を失い、結婚せず、「孤老」化するケースが多い。健康面や経済面だけでなく、こういう社会的側面も重要だ。 ▼「原爆を落としたアメリカについてどう思いますか」というい質問に対して、憎んでいない、何も感じない、と答えた人が半数近く。「戦争だったから」「戦争はどちらも悪いのだから」という回答がみられた。「二度と戦争を起こすな」「戦争だけはしてほしくない」、と平和を求める発言が多くみられた。 (2020.09)

橘木俊詔『教育格差の経済学』NHK出版新書
格差論の嚆矢ともいうべき橘木氏の本を久しぶりに書店で見つけた。「結果の格差」を容認する者も「機会の格差」は拒むのが普通だ。機会均等を標榜しつつ、なかなか実現されていない。それどころか「結果の格差も機会の格差も気にしない人が多数派になった」という。 ▼IQや学力の格差の原因をあれこれと検討している。秋田県や北陸三県の例のように、通塾率は低くとも学力の高い県があり、公教育の内容にも差があるようだ。 (2020.09)

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伊藤周平『消費税増税と社会保障改革』ちくま新書
なつかしい名前にひかれて手に取った。介護保険制度がスタートするころに富山での講演会に講師として来てもらったことがある。 ▼消費税の問題点。@逆進性 A価格転嫁できない損税業者 B輸出還付金=大企業優遇 C雇用の外注化、非正規化を促進  ▼社会保障を名目にして消費税の増税が行われるいっぽうで所得税の最高75%が今は45%と累進性が緩和されている。年金は可処分所得スライドなどにより給付の抑制が強められた。「将来、年金の最低生活保障の機能が完全に崩壊する」と著者は警告する。 ▼1990年代後半ころから日本の貧困率が目立って上昇している。規制緩和による非正規労働者が増大しはじめた時期と重なる。また、消費税が増税され、大企業・富裕層への大幅減税が行われた時期とも一致している。 ▼税と社会保障による所得再分配の効果が低下しつづけている。所得税の再分配効果はOECD加盟国中の最低水準。「再分配」後に子供の貧困率が上昇するという驚くべき状態にある。 (2020.10)

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ニコ・ニコルソン、佐藤眞一『マンガ認知症』ちくま新書
「マンガ」と題にあるが、すべてがマンガなのではなく、各章の冒頭で具体例をマンガで示し、それを導入にして心理学者の佐藤氏が説明する。なかなか面白い構成だ。 ▼WHOの国際疾病分類「ICD−11」(2018)では、軽度認知障害「MCI」(Mild Cognitive Impairment)を疾病として扱う。これは認知機能が障害されているが生活機能は障害されていない状態。日本では「疾病」としていないが、およそ1千万人が対象となる。 ▼中核症状と周辺症状(BPSD)。【中核症状】:記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害(失語)、失行・失認などの認知機能の障害。【周辺症状】=行動・心理症状:不安・抑うつ、徘徊、弄便、物盗られ妄想、せん妄、幻覚、暴力・暴言、介護拒否、失禁、帰宅願望だど。 ▼記憶障害を陳述記憶と非陳述記憶に分けて説明している。前者は、エピソード記憶、意味記憶。後者は、手続き的記憶、プライミング記憶(関連付けて引き出される記憶)。介護にあたっては「ケアとコントロール」という言葉で、扱い方を説明。 ▼父・三代吉は微小脳梗塞による脳血管性認知症、母・ミツはアルツハイマー型認知症だった。父のほうが先に、急に発症し、その後はあまり進行しなかった。母はあとから発症し、じわりじわりと進行して、父を追い越していった。 ▼認知症は、他人事でなく、自分のこととして心配する年齢になった。近頃は物忘れが多くなり、方向感覚も低下しているような気がする。 (2020.11)

原田マハ『キネマの神様』文春文庫
主人公(円山歩)や、その父、父の友人、同僚など、映画狂がぶつかり合ったり助けあったり。最後は「キネマの神様感謝祭」なる映画観賞会を開く。 ▼この小説は山田洋次監督が映画化している最中に志村けんがコロナで死亡し、沢田研二に引き継がれ、来年4月公開予定。 ▼同じ原作の演劇が2年前から上演されていて、魚津でも公演が予定されている。そのための予備学習のために本が回されてきた。ふだん小説の類は読まないのだが、そういう事情+劇団「青年劇場」との縁もあって、読んでみた次第。 ▼青年劇場との縁は55年ほど昔(1965年?)になる。魚津高校の講堂で青年劇場の演劇が上演された。タイトルは忘れたが、シェークスピアの演劇だった。そのとき、ちょうど学校側とサークル活動をめぐってぶつかりあっていて、処分を恐れて不安を抱いたり、今後の活動で悩んだりしていた。近しい先生が取り持ってくれて、劇団の宿舎を訪れることになった。 ▼宿は滑川市だった。夜、自転車で宿に向かった。黒部市のN君はバイクで合流した。古ぼけた旅館で、おもに対応してくれたのは後藤陽吉さんと瓜生正美さんだった。後藤さんはそのときは配役にはついておらず、資材を運ぶためにトラックの運転を担当していた。瓜生さんは歳よりずっと若く見える小柄な方で、押入れの棚に腰かけて話していたのを覚えている。 ▼そこではじめて「総括」なる言葉を教わった。単なる反省ではなく、さまざまな視点から意見をだしあって、まとめていく。学校側との対立の中で、鬱々としていたが、すこしは光が見えたような気がしたものだ。 ▼大学に進学して最初の年、誘われて、メーデーに参加し、青年劇場の旗を掲げて行進した。大学のクラブで演劇部に(1年ほどでやめたけど)入ったり、夏休みに運送屋のトラックの助手(荷物の積みおろし)のアルバイトをしたのも、後藤さんたちの影響があったからかもしれない。(2020.11)

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古儀君男『火山と原発』岩波ブックレット
原子力規制委員会は川内原発にGOサインをだした。噴火の影響を過小評価している。 マグマの粘性が高いほど爆発力が大きい。日本の火山は粘性が高い傾向がある。 ▼かつての大きな噴火では火山灰が大きな影響を与えている。 噴火の大きさは噴出物の量で区分される。巨大噴火(1km^3)、破局噴火(数10km^3)、超巨大噴火(100km^3以上)。 7300年前、南九州「鬼界カルデラ」の超巨大噴火(170km^3)では九州の縄文人が消失した。 ▼超巨大噴火の可能性がある以上、原発はすぐにでも廃炉にすべき〜というのが著者の結論。(2022.12)

吉岡斉、寿楽浩太、宮台真司、杉田敦『原発・決めるのは誰か』岩波ブックレット
建設と処分のコストを除けば火力に比べて原発のほうが燃料費が安い。電力会社には、火力に切り替えるための「焚増しコスト」が負担になる。 ▼テクノクラシーでは解決がつかないし、かといって数の力で押し切ればいいというものではない。たとえ原発依存をなくすとしても、原発技術は必要だ。 「専門知と民主主義の両立」が最大の課題としている。 (2020.12)

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大文字草

ダイモンジソウ(大文字草)