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機関紙誌等に発表した雑文等を掲載しています。


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あけましておめでとうございます   令和5年 元旦




簿記    2023.02.14


 2月中旬、確定申告のための帳簿や資料を税理士事務所に届けた。現役を退いたので、家計簿のようなものでもいいのだが、長年の習わしで、いまも複式簿記の帳簿を作っている。
 事務所の職員から「すごいですね」と呆れられたことがある。
 もともと数字が苦手で、帳簿をつけるなんてことは考えられないような仕事だ。なのに通信教育で簿記の勉強をした。テキストがあったはずだ、と書棚を捜してみたが、見つからない。なにせ50年も前のものだから、処分してしまったのかもしれない。
 むかしむかし、病院勤務していたころ。歯科外来の収支の状態がかんばしくなくて、事務管理部門の経理担当者から、いつも責められていた。その時に、減価償却費がどうとか、管理費の按分とか、間接人件費とか、いろんな経理用語がでてきて面食らった。そこで、自衛のために簿記の勉強を思い立った。
 歯科は検査部門や入院部門、薬剤部門などへの依存度が低く、均等に費用を按分するのは適切でない、などなど反論するのに役立った。
 その後、開業してからは自分のために役立った。当初は、減価償却費計算のプログラムを作ったり、複式簿記のソフトを作ったりしていたが、やがて市販のソフト(ミロク情報サービス「かんたん!青色申告」)を使うようになって現在に至る。
 ミロクのソフトを使ったのは、病院勤務時代にミロク方式という帳簿が使われていた影響だ。3連の複写式伝票を使って仕訳帳と元帳を作る。複式簿記の原理をうまく使ったやり方だ。
 とはいえ数字への苦手意識はそのままだ。記帳しなきゃ、と思いつつ、なかなかミコシがあがらない。






原発と防衛   2023.03.05
反核医師の会・会報掲載の原稿

 私は某電力会社の株主です。15年程まえ、亡き父から相続したものです。父の話では、電力会社の株式配当は割がいいので、預貯金よりこっちのほうがずっといい、とのことでした。
 株価は、相続した当時がピークで、いまはその頃の5分の1以下になっています。配当も下がり続け、無配になることもあります。今年度も無配になりそうな雲行きです。
 近年の苦しい経営状況のバックには原発があるのは間違いないでしょう。
 私の住む魚津市には水力発電所が10ヶ所ほどあります。ときどき山へ遊びに行くとき発電所のそばを通りますが、ほとんどは無人で稼働していて、ときどき点検のためにスタッフが回ってくる程度です。
 しかし、原発はそうはいきません。動いていなくても、管理に膨大なコストがかかります。
 株主総会の資料に面白い記述がありました。原発を建設するとき、原発稼働後の電力を他の電力会社に売る契約をしていたとのことです。
 ということは、電気は足りていたのに原発をつくったということでしょうか。建設をバックアップするために他の電力会社も手を貸したようです。そのまた背後には国の旗振りがありました。
 核燃料を扱い、その延長上に、核兵器をいつでも作れる能力を見せつけることが国防につながる、という考え方があります。日本の技術力をもってすれば、半年以内に原爆を作れるとか・・・
 いま、大幅な防衛費増加が進められています。
 ウクライナで起きていることをみても、原発の存在は防衛上の弱点にほかなりません。防衛費を増やすくらいなら、それを原発削減のために使ってくだされば、防衛のために役立つのではないでしょうか。




民衆が歴史をつくる   2023.06.06

新日本医師協会・機関紙「新医協」(2023.6.5 第1963号)掲載の原稿

 イタイイタイ病をめぐる「民衆史」をテーマにした本が出版されました。
 55年前、イタイイタイ病が日本で初めて「公害病」として認められ、10年前には神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会(被団協)と三井金属鉱業との間で「全面解決の合意書」に調印されました。その翌年から「イタイイタイ病を語り継ぐ会」が活動を開始し、昨年まで続きました。いまは「イタイイタイ病研究会」として活動を続けています。三人の著者はその会の中心メンバーです。
 まず、江戸時代以前までさかのぼって飛騨高原郷(たかはらごう)の鉱山の歴史を概説しています。三井組が全鉱山を手中に収めたあと、日清日露戦争から戦争の時代へ。鉱毒鉱害の問題が続出しても、生産が優先され、富国強兵・殖産興業とともに三井財閥が栄えます。著者は「国ありて民なし」と評します。
 太平洋戦争を機に被害はひどくなりました。戦後、住民や地元の医師らが、偏見や差別と闘いながら、鉱毒鉱害を訴えつづけ、イタイイタイ病対策協議会ができます。そして大企業を相手に訴訟をおこします。ものすごい勇気とパワーです。
 やがて「全面解決」にいたったけれども、カドミウム腎症については公害病と認められませんでした。神岡鉱山のカドミウム排出は改善されましたが、かつての操業で生じた廃棄物の中に膨大な量のカドミウムが存在します。民衆の目による監視がまだまだ必要です。
 第一章で、江馬修の小説「山の民」が紹介されています。著者の話では、この本が「起爆剤となりました」とのことです。章のタイトルは「山の民 川の民」とあり、「山の民」の続編という位置づけを目指したようです。
 「山の民」…見覚えのある名前だなと思い、本棚を探してみたら、ありました。'66年第二刷。大学に入学したころ読んだようです。あちこちに書き込みがあります。人名地名のメモもはさんでありました。大岡昇平が「わが国で書かれた最もすぐれた歴史小説」と評したそうです。
 富山県には、ほかにも「ばんどり騒動」や「米騒動」のような民衆が主役の歴史があります。富山の人口は日本のおよそ1パーセント。日本全国には、記録され、語り継がねばならない「民衆史」が、ものすごい数あるのだろうと思います。
 それらが、もっと表に出てきてほしい。その手がかり足がかりとして、この本を応援したい。どうぞ手に取ってみてください。





原発とはいったい何だろう?   2023.08.30

核兵器廃絶をめざす富山医師医学者の会・機関紙(2023.9.7 No.61号)の原稿

 後期高齢者1年生になりました。腰が痛くなったり、耳が聞こえにくくなったり、さすがに歳にはかないません。(半世紀以上前になりますが‥) 大学入試のころ、あちこちに原子力工学を専攻する学科が出来ていて、これから発展するだろう、ということで人気がありました。 親友がそちらの方面に進んだので、アメリカの下請けだ、などとからかいながらも、それなりに期待を抱いていたものです。

 富山にゆかりの正力松太郎は、プロ野球の父、テレビ放送の父、そして原子力の父とも称されます。
 1954年、ビキニ環礁の水爆実験で第五福竜丸事件が発生し、それがきっかけになって、原水爆禁止運動がひろがり、日本原水協そして日本被団協が結成されました。翌年、「原水爆禁止世界大会」が広島で開かれ、3千万筆以上の署名が集められました。
 正力は、それと並行するように「原子力博覧会」を全国で開きます。シリーズの最後は高岡での「原子力平和利用大博覧会」でした。
 「広島・長崎のピカドン、ビキニの死の灰」から国民の目をそらし、核兵器は悪かもしれないが原子力は善、というひとつの流れを作りました。その裏にはCIAがからんでいたとも言われています。

ダイナマイトで車を動かそうとはしない

 反核医師の会・原発問題連続学習会(以降「反核学習会」)第1回(8/4)では、さまざまなタイプの原子炉の安全性、環境適合性、経済性が検討されました。結果、どう考えても原発を推進するに値するような評価はでてきません。
 ダイナマイトが強力だからといって、それで車を動かそうとはしないでしょう。ものには適不適があろうというものです。
 にもかかわらず、国は原発最優先。既存の原子炉を再稼働し運転期間を延長しようとする。軽水炉の新増設をも図る。「原発産業」を最優先しているとしか思えません。

老朽化、自然災害、軍事攻撃のリスク

 第2回「反核学習会」(8/18)のテーマは老朽化原発です。中性子照射による金属の脆性劣化(脆弱化)が問題になります。このことが、運転休止していれば中性子を浴びないから、「年数」に加えない、という口実になります。
 中性子照射による劣化を調べるために同じ材質の試験片が圧力容器内に設置されていて、取り出して衝撃試験を行うのですが、40年以上を想定していないので、試験片がなくなってしまうだろうとのこと。 また、建造物や配管、配線などは中性子に関係なく経年劣化し、修理や交換は通常より難しくなります。
 そもそも大震災や軍事攻撃を想定していなければ、老朽化よりも旧式化のリスクのほうが大きくなります。

19兆円の核燃料サイクルに固執するのは・・・

 第3回「反核学習会」(8/25)のテーマは核燃料サイクル。軽水炉の使用済み燃料からプルトニウムを抽出し、高速炉を動かすことでウラン燃料を有効活用し、コストダウンする、という計画でした。使用済み燃料は、廃棄物ではなく「資源」になります。
 しかし、高速炉は実用化できず断念。プルサーマルでプルトニウムを使う口実をつくりました。しかし、プルトニウムはたまり続け、45トンを超えています。6kgで原爆ができるといいますから‥‥電卓をたたいてみて下さい。
 20年ほど前「19兆円の請求書事件」なるものがありました。使用済み核燃料の処理について直接処分と再処理を比較した資料が出て、再処理に19兆円かかるというものでした。
 このとき政府の中枢は再処理によって核兵器開発能力を持ち続けることに重きを置き、19兆円の資料を作った官僚らを処分しました。「潜在的核保有論」(核オプション)はいまも続いています。

 こうしてみてくると、原発とはいったい何なんだろう、と思わざるをえません。とてつもない資金を投入して、不完全なまま核燃料サイクルを作り、「核オプション」をひそかに抱える。発電のコストや安全性とはまったく別の次元での政策だとしか言いようがありません。


 反核医師の会 原発問題連続学習会
 第1回 8月4日
 講師:岩井孝さん(元日本原子力研究開発機構研究員)
 テーマ:岸田政権の原発回帰とGX脱炭素電源法の問題点
 第2回 8月18日
 講師:舘野淳さん(元中央大学教授、元日本原子力研究所研究員)
 テーマ:老朽化原発の危険性
 第3回 8月25日
 講師:松久保肇さん(原子力資料情報室事務局長)
 テーマ:使用済み核燃料の再処理問題



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