《2024|2025-
1・
2・
3・
4・
5・
6・
7・
8・
9・
10・
11・
12
|2026
》
山根一彦・三好祐(絵)『認知症にならない最高の習慣』新潮社
デール・ブレデセン博士が開発した「リコード法」というアルツハイマー病の治療法を紹介するのがテーマ。「マンガでわかる」とサブタイトルがついていて、著者のひとりが絵を担当している。 ReCODE = Reversal of Cognitive Decline
▼アルツハイマー病は認知症の70%を占め、約20年で18倍になっている。
アミロイドβを除去する薬(レカネマブ、ドナネマブ)が認可されたが、アミロイドβを除去してもアルツハイマー病は改善しない。
アミロイドβは「脳の正常な防御反応によるもの」であり、
「脳に侵入する有害な病原体や物質と戦ってっくれる反面、健康な脳細胞にもダメージを与えてしまう」
▼アミロイドβを作り出す原因を減らすことで認知症を改善できる、という考え方がリコード法の基本。 @炎症 A栄養不足 B毒物暴露 〜
そのための対策として、食事、運動、睡眠。それぞれについて細かく記述されている。
(2025.01)

山根一彦『認知症を防ぐ最高の食べ方』KADOKAWA
同じ著者の本を続けて手に取った。リコード法のなかから「食事」をとりあげている。
▼第1章はリコード法の復習。血糖値が上がる食べ物は認知症のリスクを上げる。歯周病菌が原因でアミロイドβが増えるという研究報告もある。
▼第2章はNG食品。白米や小麦、牛乳なども挙げられている。第3章はOK食品。「水」が筆頭に挙げてある。第4章は食べ方。腹八分目、野菜たっぷり、よく噛む。そのほかに食べる順序は洋風のコース料理を参考にするといいらしい。
▼巻末に「脳がよみがえる食材リスト」という表が掲載されている。NG食材の表はない。 (2025.02)
森永卓郎『身辺整理 死ぬまでにやること』興陽館
今年1月28日に亡くなった著者が、終末期のガンを宣告されてから取り組んだ身辺整理がテーマ。アマゾンになくて、市内の書店へ行ったら1冊だけ在庫があった。
▼2023年12月、膵臓がんステージWと宣告された。のちに「原発不明がんの終末期」と診断された。「死」を意識して生きることは極めて前向きなことなのだ…とのこと。
▼ミニカー、フィギュア、名刺、空き缶、などの膨大なコレクション。私設博物館「B宝館」を次男がひきつぐことになった。
▼「一匹オオカミで生きる」が信条。「親友なんてものは絶対に作ってはいけない」、「仲間」を作ると巻き込み、巻き込まれる。仲間を作ると、同時に仲間外れを作る。
▼「あとがき/遺言」の中で、マルクスの言葉として「資本主義の限界」を示す
1、許容できないほどの格差社会になる/
2、地球環境が破壊される/
3、少子化が止まらなくなる/
4、ブルシット・ジョブ、つまりクソどうでもいい仕事ばかりになって、人々が仕事に生き甲斐を見出せなくなる (2025.02)

長谷川和夫・猪熊律子『ボクはやっと認知症のことがわかった』KADOKAWA
著者・長谷川は「長谷川式スケール」で知られる専門家。当のご本人が認知症になり、思いを伝える本。もう一人の猪熊はこの本の作成に協力した読売新聞編集委員。
▼「まえがき」に、転んで顔に青あざをつくったり、テレビショッピングで要らないものを注文したり〜と書いている。誰かとそっくりだ。
▼行ったことがある場所に行き着かない、今日が何月何日で何曜日かわからない、予定を忘れる、鍵をかけたかどうかなど「確かさ」が薄らぐ‥‥などから、認知症と自覚したとのこと。くよくよしているよりは、いまできることをやろうと決めた。認知症であることを公表し、語ることを始めた。
▼その日によって、また時間帯によて、症状は変動する。
同時にいくつものことを理解するのが苦手。
すべての役割を奪わない。得意なことをやらせ、褒める。など、
パーソン・センタード・ケア(person-centered-care)を推奨。認知症をもつ人を一人の「人」として尊重し、その人の立場に立って考える。
▼「決してやってはいけないことがあります。それはクルマの運転です」と、運転を否定している。本人はもともと車が好きで、高級な車を乗り回していたらしい。たしかに、本人だけでなく周りにも危険性が高まる。
▼最後に猪熊律子の「解説」があり、取材中に出会った長谷川の言葉をいくつか紹介している。・「認知症になったからといって、人が急に変わるわけではない」
・「認知症でない人だって間違うよね」
・「認知症の本質は、暮らしの障害なんだよ」
・「認知症の人の言葉をよく聴いてほしい。聴くということは待つということ。待つということは、その人に時間を差し上げること」
▼本の出版は2019年12月、長谷川氏は元聖マリアンナ医科大学学長、理事長。長谷川式スケールは1974年発表。1921年11月、92歳で死去。
(2025.03)

長谷川嘉哉『ボケ日和』かんき出版
著者は10代のころに祖父の認知症を体験し、それが認知症専門医になるきっかけだったという。「ボケたじいちゃんが、私に白衣を着せてくれた」。
春夏秋冬と章分けして、認知症の進行度にあわせて解説している。
▼第1章「春」。「ちょっと変」がMCI(早期認知障害)のはじまりとして、物忘れ、待てない、怒りっぽい、運転が下手に、詐欺に引っかかる、などを挙げている。5年以内に約5割が認知症に進行する。
▼第2章「夏」。薬の管理ができなくなる、服を着るのが難しくなる(着衣失行)、
探し物頻発、料理ができない、新しい家電が使えない、見当識障害など。
▼第3章「秋」。暴言・妄想・徘徊・幻覚などのはげしい周辺症状。「モノ盗られ妄想」は信頼している人に向けられるので「介護の勲章」だと・・・
▼第4章「冬」。末期となると、むしろ落ち着いて、一日中ぼんやりするようになる。「もう家では看られない」となるのが、トイレの失敗がでてくるタイミングだとのこと。また、施設住所となったとき、若いころの写真を飾ることを勧めている。口から食事を摂れなくなったら寿命と悟るべき。無理な延命治療は無意味。
(2025.04)

五木寛之『遊行期』(ゆぎょうき)朝日新書
著者は92歳。この歳になって書き続けているのは驚異的。いままでこの人の本は読んだことがなかった。
▼サブタイトル=「オレたちはどうボケるか」‥ ヒトは必ずボケる。少しでもよりよいボケをめざす。「ボケ道」=よりよいボケかたをしていく道を目指す。
▼ボケにかかわる四つの「衰え」=
@聴力、A視力 B咀嚼力 C歩行力
▼「ボケることが人間の自然の流儀」ととらえ、できるだけ楽しいボケかたを目指す。そのためには、生活に変化をつける。「転」と「雑」を大切に。
▼たしかに、ボケを忌み嫌っていても何にもならない。いかにうまく適応していくか・・・答えは難しい。 (2025.05)

堤未果『国民の違和感は9割正しい』PHP新書
堤未果の本を読むのはは9冊目。
父は放送ジャーナリストのばばこういち、母は詩人の堤江実。弟はアニメーションアーティストの堤大介、夫は参議院議員の川田龍平。
▼さまざまな情報の裏を読む。ちょっとやりすぎかな?と思うところもあるが、意外な一面を知らされる。
▼ガザ沖に天然ガス田が見つかり、そのことがイスラエルのガザへの攻勢の背景にある。ウクライナもレアメタルの鉱山を有している。ちょっとした事件が戦争の発端になってはいるが、その背景には膨大な戦争コストに見合うものを隠し持っている。(2025.06)
高橋悟『過活動膀胱がわかる本』講談社
著者(監修)は日本大学医学部泌尿器科教授。
まぎらわしいが過活動膀胱ではないものに、「前立腺肥大症」「夜間頻尿」「間質性膀胱炎」などがある。男性の場合は前立腺肥大症の半分が過活動膀胱を継発している。
▼過活動膀胱治療薬には尿閉の副作用を有するものあり。要注意。
▼行動療法だけで7割の人が改善するという。膀胱訓練、骨盤底筋訓練、減量、水分摂取など。
▼行動療法&薬物療法を3か月ほど続けても改善しない場合は「難治性過活動膀胱」とされ、ボツリヌス毒素注入療法、仙骨神経刺激療法、膀胱拡大術などの対象になる。
(2025.06)

伊古田俊夫『認知症とはどのような病気か』講談社ブルーバックス
著者は北海道の勤医協中央病院の医師。当方の古巣・山梨勤医協と同じく民医連に加盟している。
▼サブタイトルに「お年寄りが増えても認知症の人が減る」時代が来ている。とある。発症する比率が低下しつつあるようだ。その要因は、
@生活習慣の改善(健康的な生活習慣)
A青少年期の教育の充実(脳機能低下を脳内神経回路が補う)
B高齢者の就業率の上昇
▼認知症の中核症状、周辺症状、などなどかなり詳しい内容。一般の人よりは医療や介護関係の仕事についている人に読んでもらいたい本かもしれない。
▼最後のほうで、これからの方向として、○「新しい認知症観」の普及 ○「認知症の人に優しい社会」 ○「認知症予防」〜認知症者数の減少 などを挙げている。
(2025.07)

早坂隆『戦争の昭和史─令和に残すべき最後の証言』ワニブックスPLUS新書
著者は昭和48年生まれの若手ノンフィクション作家。歴史学的な視点よりは、「当事者の証言」に重きを置いているようで、どうしても証言者に思い入れがはいる。
▲パラオ、台湾、韓国といったかつての日本統治下だった地域の住人の取材。
▲中国、満州での軍人関係者の話。特攻隊、空襲、ソ連の侵攻、抑留・・・多方面にわたって、関係者の証言を集めている。これだけ取材するのは、たいへんな労力だと思う。
(2025.08)


ダイモンジソウ(大文字草)