BOOK2002
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 《2001|2002− 1011122003



2002年1月

東谷暁『経済再生は日本流でいこう』洋泉社新書
「市場は支持していない」「市場は許さない」などなど、経済紙はあたかも「市場教」とでもいうべき宗教団体の機関紙のようだった…と最近の風潮を批判する。ばかばかしいほどに中味のともなわない言葉が氾濫している。引用が多く読みづらいところもあるが、新自由主義(市場原理主義)が前提としている様々なテーゼを事実でつぶしていく。困ったことに時の首相は新自由主義者の傀儡となっている。2002.01.07

アメリカ医療視察団『苦悩する市場原理のアメリカ医療』あけび書房
関西の開業医を中心とした視察団が01年春、アメリカを訪れて見聞したことの報告。第1章で、アメリカの医療の歴史と現状を簡潔にまとめてある。2章以降は、各地の医療機関やHMO、保険会社などの「見聞」である。とくに、第6章、「医療防衛委員会」のヒンメルシュタイン医師の話は必読。なぜに、かくも問題の多いアメリカの医療制度を真似ようとする人々がいるのか・・・ 2002.01.23

常石敬一『化学物質は警告する』洋泉社
著者は、毒物事件が起こるとマスメディアに担ぎ出される。毒物の専門家と見られているが、科学史が専門。塩素を使った本格的な戦争のエピソードなど、歴史を繙きながら、哲学的な思索を広げていく。究極は「化学物質との共存」だが、はたして可能かどうか・・・。この著者の他の著作にもいえることだが、化学を扱いながら、化学式はひとつもでてこない。2002.01.30

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2002年2月

山田春木『こわい病気のやさしい話』文藝春秋
病気がこわい年代になってしまった。あちこちに故障を抱えている。ついこういう本に手が伸びる。2002.02.08

マークス寿子『不安な国日本』光文社
著者は日本と英国に半々で暮らす。外から見た日本の福祉の異常さをえぐる。副題に「福祉の国イギリスから見ると」とあるが、福祉の比較を期待すると肩透かし。福祉を大切にする文化と、子どもばかり甘やかす文化との比較、といったところ。「静かに『生きる』ことを楽しむのが悪いように感じられる日本という国。村おこし、町おこしと『金』めあてにあちこち掘りおこしているが、『金』と損得以外に人間にとって大切なものをこの国は忘れていないだろうか」2002.02.17

東谷暁『日本経済「常識のウソ」』文芸春秋
4年前に出版された本。「積ん読」になっていたのを、近著『経済再生は日本流でいこう』を読んで、気になって引っ張り出してみた。「構造改革」全般にわたって、その根拠としている主張を検証している。まことしやかにマスメディアをにぎわす主張の、多くのものが根拠薄弱だ。相撲取りがアメフトやろうとして苦心惨憺しているみたい・・・2002.02.24

増村征夫『安曇野一日の花歩き野歩き』講談社
著者は九州生まれ。安曇野の自然に惹かれて大町市に移り住んだカメラマンである。四季折々の安曇野の草花と、その撮影にまつわる話を綴っている。「花に癒されていた」と著者は振り返る。2002.02.28

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2002年3月

保母武彦『市町村合併と地域のゆくえ』岩波ブックレット
いま「平成の大合併」の掛け声で市町村合併が進められている。2005年3月まで、と期限をつけ、補助金(地方財政措置)を餌にして、自治体数1000を目標にしている。かつて「大合併」は2度あった。明治の大合併は、国から委任されて行う行政事務(例えば義務教育)を遂行するために不可避だった。戦後、新憲法に地方自治が謳われ、農地改革・民主選挙・義務教育の拡大など、自治体事務(行政需要)が増大し、「町村合併促進法」(53.9〜56.9)により自治体数は約3分の1になった。平成の大合併は国の財政危機のつけ回しが最大目標だ。2002.03.03

二宮厚美『日本経済の危機と新福祉国家への道』新日本出版
新自由主義構造改革派は「憲法に対する抵抗勢力」だ、と説き起こす。新自由主義の貫徹は、社会保障を切り下げようとしながら一方で貧富の格差を拡大し、社会保障の需要を拡大する。その矛盾を衝いて戦いをいどまなければならない、というのが著者の大戦略である。戦後、憲法に定められた福祉の原則(平等・公的供給責任など)が、介護保険および医療における特定療養費にみられる公的責任の放棄・現物給付主義から(部分的)費用補償への転換している。また、医療だけでなく福祉・年金における「二階建て」化。社会保障を「民営化・営利化・商品化」することにより、公的責任を縮小し新たな市場をつくりだす、という新自由主義的戦略が多方面で進行している。2002.03.13

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2002年4月

海野和男『海野和男の里山日記』世界文化社
小諸のアトリエ周辺から海外出張先まで、デジカメで記録し毎日更新するHPを書籍にしたもの。200万画素クラスのデジカメで、ここまで撮れる。2002.04.08

藤和彦『賢く使え、経済統計』光文社新書
著者は経済統計に関わる現役官僚である。おもに景気をあらわす各種統計の問題点を示す。「経済成長率」の速報値が需要サイドの統計であり、確定値が供給サイドの統計、なんてことは、当事者にとっては常識かもしれないが、一般にはオドロキである。とりわけマスメディアは数字を盲信する傾向があり、統計の意味を考えずに大きく報じる。要注意である。2002.04.14

高田明和『40歳をすぎても記憶力は伸ばせる』講談社+α新書
40歳をとうにすぎてしまって、記憶力の低下に自分が情けなくなることが多い。いきおい、こんな書物を手にとってしまう。20歳をすぎると1日10万個の脳細胞が死んでいく、といわれてきた。ところがつい最近、脳細胞は増える、ということがわかったという。逆に、強いストレスや鬱状態が脳細胞(とくに海馬)を死滅させることも明らかになってきた。2002.04.21

小塩隆士『高校生のための経済学入門』ちくま新書
「高校生のための」となっていて、高校生に語りかける口調で書かれているが、要は大学以前の教養として知ってほしい、という意図であろう。エピローグに、高校生は数学・外国語・自然科学などをきっちり身に付けよと記している。「高校時代にどうしても経済学を学ぶ必要があるとは、著者には思えません」とも。2002.04.26

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2002年5月

金田洋一郎『花の写真入門』日本放送出版協会
野の花の写真を撮りながら、こういった技術書は読んだことがなかった。単に特徴を捉えることに意を注いでいたので、いわゆる「日の丸」写真が多く、写真をする人からみれば味も素っ気もない絵に見える。かといってデジカメの自動焦点は、「日の丸」にしないと合焦してくれないから困る。2002.05.05

原田泰『人口減少の経済学』PHP研究所
著者は財務省関連の研究所に所属する官僚。政策立案の元になっている考え方を知るには好適の書だ。例えば--。外来受診回数が欧米の約2.5倍で、医療費に占める外来比率も高い、として「過剰な医療」と決め付け、窓口負担を増やして受診を制限することを正当化している。そもそも日本の医療費が欧米に比して低すぎることには触れない。「モデル年金」での比較などから、日本の年金は世界一高く、「日本の高齢者は年金によってすでに豊か」だとも。見事である。2002.05.08

末永徹『日本が栄えても、日本人は幸福にはなれない』ダイヤモンド社
著者はばりばりの市場主義者である。そのうえで、GDPの拡大を至上目的とする今の「改革」に疑問を呈する。見本とするのはオランダまたはヴェネチアである。市場主義の立場から、こんな見方もある。2002.05.31

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2002年6月

三好春樹『元気がでる介護術』岩波アクティブ新書
帯に「老人介護という仕事はこんなに面白い」とある。各章の末尾に、まとめの箴言が記されている。「自然と老いには逆らうな」「老人の生活習慣を変えるな」「老人の性格を変えようなんて思ってはいけない」「介護はあきらめから始まる」「訓練意欲を生活意欲へ転換しよう」など。2002-06-08

築山節『ボケ連鎖』講談社
著者は脳神経外科医で「高次脳機能外来」を担当している。ボケた家族と同居している人がボケる、という現象がみられる。「近親者の世話をすることだけに集中するあまり、いつの間にかボケやすい環境に中に迷い込み--脳の機能が低下してしまった」、これを「ボケ連鎖」と定義している。配偶者間で見られるヨコ連鎖と、親子の間で見られるタテ連鎖がある。責任感が強いほど、また孤立すると、この迷路に入りやすい。他人事ではない。2002-06-23

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2002年7月

内橋克人『浪費なき成長』光文社
いまや希少価値ともいうべきヒューマニズムを基礎においた経済評論家。改革と持てはやされているものの正体は、「国民を投資、投機の熱いフライパンの上で踊らせよう」とする金融政策であり、「経済は栄えて、社会は衰退する」。1人勝ちの市場競争原理主義のもとでは、「努力した者」は報われない。--うそつきポーカーをもてはやすような風潮に警鐘を鳴らす。2002.07.08

大場秀章『道端植物園』平凡社新書
一般向けの書としては専門用語にあふれている。難しいところは読み飛ばして、道端の植物の名前の由来やら、発見命名のいきさつなどを読むだけで、それなりに楽しめる。2002.07.11

飯田経夫『人間にとって経済とは何か』PHP新書
かつて「豊かさ」を論じた経済学者。経済学の目的は、貧乏をなくすことだ、という。その意味では、経済学は「役割を果たし終えた」ともいう。不況だといいながら、概して言えば「豊か」になっている。貪欲に金を追い求める経済学は、人間を幸せにみちびくどころか破局にみちびく。しかし、著者は「福祉国家」を評価しない。何をめざすのか見えてこない。2002.07.15

内橋克人ほか『規制緩和という悪夢』文春文庫
大胆な規制緩和が実行されれば、物価は下がり、消費者の購買力は増加、その新たな需要をめがけて、これまで存在しなかったニュービジネスが誕生、雇用を創出し、非効率産業で生まれた失業者を吸収していく----規制緩和(=市場主義)論者の「福音」を、実証的に批判していく。第2章の中谷巖批判は痛快。「規制緩和とは、ほんの一握りの非情でしかも貪欲な人間に、とてつもなく金持ちになる素晴らしい機会を与えることなのだ」(かつて規制緩和に寄与した、ポール・デンプシー=デンバー大学教授)。ともあれ、93年「平岩レポート」あたりから勢いをつけた市場主義に対し、94年から95年にかけて、このような著作を出した慧眼には敬服する。2002.07.27

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2002年8月

アマルティア・セン『貧困の克服』集英社新書
「人間の安全保障」を提唱するアジア初のノーベル経済学賞受賞者。「平均値」統計からは絶対にありえないと思われる飢饉が社会のある階層に生じることがある。重大な危機が発生する際に大切なことは「不平等」の存在だ。上潮のときは社会が連帯しているように見えても、下降局面になると「分裂しながら落ちていく」。氏は社会的なインフラとして基礎教育と医療制度を重視する。また民主主義の普遍化を20世紀のもっとも重要な出来事だとしている。真のグローバリズムは経済(企業活動)のそれではなく、人権のそれだ。2002.08.07

宮本宣良『越境者の記憶』桂書房
この本の主人公・深山正之氏にはいろいろとお世話になっている。いつだったか「パーロ(八路軍)に捕まって軍医にされた」と話されたことがある。この本は、深山氏の「記憶」を引き出してまとめられたものだ。正之・晴・敏夫の3兄弟が、それぞれ八路軍・米軍・日本軍の軍服を着て戦場をかけめぐった。数奇といっては軽々しい。苛烈な運命だ。2002.08.14

竹岡美智子『50歳からの人生を考えた家づくり』講談社+α新書
押入れは天袋を下に、トイレはツーウエイ、物置も屋内外からのツーウエイ、などなど年をとってからの住居についてのさまざまなノーハウが紹介されている。60歳までには終の棲家を、とかねがね思っているので、おおいに参考になった。著者は「5年〜10年でリフォーム」をと提唱しているが、なかなかそこまでは出来ないのではないだろうか。2002.08.16

内橋克人編『誰のための改革か』岩波書店
金子勝、山家悠紀夫、神野直彦ら反市場原理主義の論者らとの対談集。「マネー市場こそがアメリカにとって最大の戦略産業となった」「マネー資本主義に対してバリアフリー化」することが、まさに「構造改革」路線だ(内橋)。経済学者は「セーフティネット」という用語を気軽に使う。「米国では金融制度論の中で、欧州では福祉などの社会的セーフティネット論という形で」論じられてきた(金子)というが、もうすこし整理が必要だ。努力した者が報われる、というが「1人勝ち」の競争原理のもとでは、大多数が「努力しても報われない」(内橋)し、「強くなりそうなものは助け、弱いものの足は引っ張る」ような規制緩和は自由競争ですらない(山家)。生活感覚のない「宇宙人」が政策を立案している、と内橋氏は痛罵する。2002.08.20

唐鎌直義『日本の高齢者は本当にゆたかか』萌文社
高齢者金持ち論とそれに基づく政策を批判する。高齢者の所得、とりわけ年金の格差の問題をとりあげている。私が以前に取り組んだこととほぼ同じ結論に達している。後半は統計の読み方が細かくでてきてどうなることかと思ったが、消費(生活)格差を分析する伏線だった。著者の別の論文では所得格差→生活格差→資産格差と連鎖的に拡大している、と指摘している。大企業や公務員の労組が社会保障を真正面から取り上げることができなかったことに、あえて苦言を呈しているのは興味深い。2002.08.21

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2002年9月

矢野直明『情報編集の技術』岩波アクティブ新書
タイトルに「技術」とあるが、ノウハウ書ではない。パソコンやインターネットの時代、「一億総エディター時代」の編集心得、といったところ。帯に「デジタル時代の『知的生産の技術!』」と謳っているが、内容からみてオーバーだ。2002.09.01

日経ビジネス編『公共事業なんかいらない』日経BP
最終的に「市場原理」に解決を求めるところは気に入らないが、さまざまな実例をこまめに取材して書いているところは立派。冒頭でとりあげている徳島県木頭村は、たしかに日本における「公共事業と地方」の縮図だ。長野県が二の舞にならないことを切に祈る。2002.09.03

神野直彦『二兎を得る経済学』講談社+α新書
1年ほど前に手にして、何度か開いて読みかけては中断していた。言い回しが難解。講演を聴く機会があり、話はわかりやすかった。「シュンペーター的財政赤字」という概念が繰り返しでてくるが、門外漢はこれで躓く。「景気回復」という1兎を追って何も得られなかった日本、「財政再建」という1兎を追い、それを得たが深手を負ったフランス・ドイツ。二兎を追って両方を得たスェーデン。「社会的セーフティネット」「社会的インフラストラクチュア」を築くことで二兎を追うべき、というのが結論。しかし、「シュンペーター的ワークフェア地方政治」云々となってくると、ついていけない。2002.09.10

高杉良『外資の正体』光文社
著者が、朝日新聞「私の視点」欄に寄稿した「竹中流改革・カジノ資本主義でいいのか」に対する反響に答えて、文藝春秋5月号に寄稿した「竹中経財相は外資の手先か」が冒頭に収録されている。そのほか、幸田真音、佐高信、黒木亮などとの対談や雑誌掲載の文章を収録している。冒頭の1編に、著者の言いたいことは凝縮されている。日本の不況はアメリカ発であり、アメリカに追従する「国賊」として、竹中経財相らを名指しで批判する。2002.09.14

筑紫哲也『ニュースキャスター』集英社新書
TBS「ニュース23」をめぐるエピソード集。オウムビデオ事件の顛末の部分を読みたいために買ってきた。この件に1章が割かれている。しかし、「その後」TBSが会社としてどういう対応をとったか、マスメディアに何らかの変化が起きたのか、ということについては言及されていない。筑紫氏の言葉によれば「まだ、まだ、とても」ということらしい。2002.09.18

永六輔『ボランティア』講談社+α新書
副題が「無償(ただ)の仕事」。要は、相手に喜んでもらえて自分も楽しいことをするなら無償でいいのだろう。有償であっても一向に差し支えない。往々にして、無償だからといらぬおせっかいの押し付けになったり、あるいは無償を強いたりする。ボランティアを推奨したり強制したり、はたまた期待したりするのは見当違いなのだ。とかく「ボランティア」という言葉には胡散臭さがつきまとうので、好きではない。2002.09.19

金子勝・テリー伊藤『入門バクロ経済学』朝日新聞社
「お笑い」仕掛け人のテリー伊藤&「学界のアルカイーダ」金子勝氏との対談の形をとった「入門書」。市場主義に反対する金子氏には注目しているけれども、その著書は神野氏に負けず劣らず難解だ。しかし、この本は、きわめて平易に解説している。テリー伊藤氏というと、キワモノじゃないか?と身構えたくなるが、きわめてまともな内容だ。「多様化」「効率化」さいごは「自己責任」、この3つが「市場真理教」の呪文だ。竹中平蔵は「族学者」--などと手厳しい。2002.09.20


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2002年10月

佐々木信夫『市町村合併』ちくま新書
著者は東京都庁勤務を経て中央大学教授。ネットで検索したかぎりでは政府の諮問会議や政府系研究機関などには関与していないようだ。ちかごろは本を読む前にこういう検索をかけてみる。騙されないためのひとつの自衛策だ。著者は「なるべく客観的に解説するよう努めた」と「はしがき」で述べている。が、基本的には合併(自治体規模の拡大)推進の立場である。「理論的」には15万〜30万人規模が適正、としている。多くの地域では優遇措置をあてこんで合併論議が進められている。行政も議会も浮き足立っている。アメとムチで短期間のうちに合併に向けて追い立てる国の政策には腹が立つ。2002.10.01

佐藤武彦『立山自然観察ガイド』山と渓谷社
新書版120ページ余のコンパクトな本だが、立山の魅力を要領よくまとめてある。一部、本格的な登山コースの紹介もあるが、ほとんどはハイキング(トレッキング)コースだ。地元にいながら、立山は何となく遠い存在で、数えるほどしか足を運んだことがない。来年は湿原に花の咲く時期に行ってみよう。2002.10.05

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2002年11月

井上ひさし『あてになる国のつくり方』光文社
井上氏を中心に、農業問題で山下惣一、経済問題で北村龍行氏、NGOで井出勉氏がそれぞれの章を受け持つ。世の中のことは「世の中を動かしている偉い人」の責任ではなく、「同じ時代に生きているフツーの人」にも責任がある--と書き出す。平和と憲法、食糧問題などは○だが、毎日新聞論説委員・北村龍行氏の議論は論点不明で×。さすがの井上氏も9・11事件に対して最初は歯切れが悪いが、後のほうでは、はっきりしてくる。2002.11.09

白澤卓二『老化時計』中公新書ラクレ
「不老」と「長寿」に関わる研究の最前線を紹介する。人類は20世紀に30年寿命を延ばし、うち20年は抗生物質による。遺伝子が、冬でもないのに「冬眠モード」になってしまうのが長寿だという仮説がある。のんびり生きれば長生きできるようだ。2002.11.22

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2002年12月

風樹茂『ホームレス人生講座』中公新書
8人のホームレスの個人史を克明にたどる。普通の生活と路上の生活は、さほど隔たっていない。多くのホームレスが、身分を証明する年金手帳などをひそかに所持しているのは興味深い。著者は「人を人たらしめる生存の根幹がうしなわれつつある」と言い、その「失われたもの」は「縁」だと言う。カタカナで表せばアイデンティティということになる。2002.12.05

藤原帰一『デモクラシーの帝国』岩波新書
冷戦が終わり、世界は分断から協調へむかうかに見えた。が、いまあるのはアメリカへの追随である。国家の独立は名目にすぎなくなった。この現象を「帝国」という概念で捉え、分析する。圧倒的に強力な軍隊と通貨を持つアメリカが世界政府を代行している。しかし、つまるところアメリカ政府はアメリカ社会に責任を持ち、アメリカの国益に沿って行動し、それを制御するのはアメリカの選挙権を持つ者に限られる。2002.12.12

惣万佳代子『笑顔の大家族・このゆびとーまれ』水書房
惣万さんとは何度か会合で一緒になったことがある。外見からは豪快な女性、という印象を受ける。この著書は、前半が最近の「このゆびとーまれ」の日々を描き、後半がかつて看護婦をしていたころの作品を収める。看護・介護の現場での感受性豊かでこまやかな一面が伝わってくる。ただの女傑では信用できないが、この人は信用できる。2002.12.19


佐高信『こんな日本に誰がした』講談社文庫
いつもながらの歯切れのいい人物評。叩くだけでなく、本田宗一郎や井深大などを大いに持ち上げる一面もある。著者自身は、文章から想像するような「怖い」人物ではない(らしい)。2002.12.25


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大文字草

ダイモンジソウ(大文字草)