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数字でウソをつくな!(その30)

認定精度が向上した

 


2003年4月、要介護認定のコンピュータソフトが改定された。それによって「精度が著しく向上した」と自画自賛している。

すうじ30

グラフから、ばらつきがすくなくなっていることが明らかである。このこと自体は結構なことである。
この「時間測定」について復習しておこう。
モデルとして選定された介護保険施設において、調査票でチェックされた被介護者に対し、介護スタッフが直接手をかけている時間を測定し、それをチェック項目との間で膨大な計算処理を行う。こうして得られた算式をもとにして、調査票のチェック項目から介護に要する時間数を推計し、その時間数(1日あたり)に応じて要介護度を判定する。このような大規模なタイムスタディは、なかなかに意欲的なものであり、介護保険の導入前の厚生省(当時)の第一線のスタッフは、それなりに真面目に懸命にがんばっていた。

しかしながら、次の点を忘れないでほしい。

(1)施設での介護と在宅での介護とでは効率がまったく違う。
  「住宅(政策)は福祉(政策)」である、とも言われる。現在の日本の住宅事情は介護に適しているとは言いがたい。北欧の福祉先進国にくらべて介護の効率が半分以下になる、とも言われる。要介護になってから「住宅改修」が補助されるという制度も馬鹿げている。

(2)ここで得られる推定値はあくまで平均値である。
  大なり小なり平均以下、平均以上が存在する。それが平均値というものだ。平均値を「上限」として固定的に考えることは数字の性質上無理がある。例外的なケースに対処できる方策を備える必要がある。 タテマエ上は「老人福祉法」にもとづく「措置」がいまも生きている。しかし、介護保険制度がスタートしてからは、ほとんど機能停止状態におちいっている。

(3)以上を踏まえた上で、タイムスタディを基礎におくという原則を堅持してほしい。
  というのは、医療保険が「皆保険」としてスタートする時期に、さまざまな医療行為についてタイムスタディをして、当時はそれなりに相対評価としては妥当性のある診療報酬体系をつくる努力がなされた。ところが、その後、医療費抑制をおもな動機として政策的に医療費が配分され、コストと診療報酬の間に著しいアンバランスが生じてしまった。そのことが医療の姿をゆがめる大きな要因となっている。こういう過去の反省から、タイムスタディを評価するのである。


2004-09-10 UP 


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