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数字でウソをつくな!(その29)

介護で重度化    

 


総合的な介護予防システム、厚労省部会が報告書
 現在、介護が必要な高齢者の半数は「要支援」と「要介護1」が占める。・・・ 要介護1も含め、サービスの利用が本人の状態の改善につながっていないとの指摘がある。  このため、「新・予防給付」を創設。要支援や要介護1程度と認定された場合は、基本的に「新・予防給付」を受けることとする。04.07.30 朝日新聞
■「要支援」と「要介護1」の高齢者が新たに利用できる「介護予防サービス」について、報酬体系を月単位の定額制とする方向で検討に入った。04.07.16 共同

厚労省社会保障審議会介護保険部会の報告書(介護保険制度見直しに関する意見)を報じた記事である。報告書では、「予防重視型システム」へ転換し「総合的な介護予防システム」の構築が必要であるとして、要支援、要介護1などの軽度者を対象に「新・予防給付」を創設する、としている。「市町村を責任主体とする統一的な介護予防マネジメント」の主導のもとに「介護予防プラン」を策定し、従来の介護サービスに代えて、筋力向上トレーニング、口腔ケア、閉じこもり予防等の新たなサービスを提供する。

数字29


興味深い統計資料であるが、これから、なぜ「軽度」には介護より予防(リハビリ)という結論がでてくるのか理解に苦しむ。あまりにも短絡的ではないか。

軽度要介護者ほど重度化の率が高く見えることが「軽度」への風当たりを強くしている。
要介護度を区分する基準となっている「要介護認定基準等時間」の刻みは、要支援→要介護度1が7分、要介護度1→要介護度2が18分、あとは20分づつとなっている。「軽度」ほど変動の影響が増幅される。ためしに刻み目の幅で補正すると要介護度1の「重度化率」は31%、要支援は17%となる。軽度要介護者ほど重度化する、とする根拠はない。
数字29
ところで、審議会はグラフの緑色の部分に目を奪われたようだ。
が、他の部分にも興味ある所見がある。

橙色の「改善」のうち、ほんとうの改善はどれだけなのだろうか。病気や障害が重症化して、逆に要介護度が下がることもありうる。また、状態が変動する場合には調査時によるブレもある。

白の「認定なし」はどうだろう。病気で医療保険の「入院」になれば介護保険の認定は意味がない。ただし、軽度の場合には「改善」のほかにアキラメが多分に入ってくることが考えられる。

それ以上に目を引くのは赤いグラフ、2年間の死亡率の高さだ。「難病」に劣らないのではないだろうか。ターミナルケアの視点が必要であろう。

リハビリの重要性・有効性は介護の分野でいままで軽視されてきた傾向がある。その反動なのだろうか。しかし、個別に対象を選んで、「介護(ケア)も予防(リハビリ)も」を基本として実施すべきことであって、軽度だからというだけで一律に介護を省いてリハビリを無理強いするべきではない。審議会の「意見」では「廃用症候群」を対象とする、と断りをいれてはいるが、「軽度」を軽視しようとする財政的な圧力に巻き込まれてしまうことを大いに危惧する。




2004-09-10 UP 


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