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数字でウソをつくな!(その28)
「軽度」が増える
■03年10月時点の要介護認定者は、制度創設の2000年4月の7割増で371万人。要支援や要介護1は2倍以上に増え‥‥ 04.03.13共同
■介護保険の給付費は2004年度で5兆5000億円と導入から4年で1.7倍に急増。2025年度には20兆円に達する見通しで、保険財政の悪化が懸念されている。04.09.04日経
介護保険財政悪化の原因は給付の増加であり、給付の増加を招いているのは要介護認定者の増加とサービス利用率の増加であり、なかでも「軽度」の増加が著しい。というわけで「軽度」要介護認定者をまるで害虫のように扱う風潮がある。
4年の間に、要介護認定者が7割以上増え、うち「軽度」が2倍以上増えている。ここで最後の1年で「要介護2」が減少していることに注目していただきたい。このことについては後述する。
社会保障審議会介護保険部会では大きな「地域差」の存在を問題としてとりあげ、その要因を分析している。地域差そのものよりも、興味ある結果がでている。とはいっても至極あたりまえの内容ではある。
すなわち、認定者率と認定申請率に大きな相関があり、認定者率が高いほど「軽度」の比率が高い。 また、介護保険事業者が多いほどサービス受給率が高くなる。
だから事業者が多くならないように制限すべきだ、と発想するのはいかがなものか・・・ いまだに無知やスティグマやアキラメから申請していない人が多く存在する。ニーズはまだまだ潜在していると見るべきである。
以上の出典は社会保障審議会介護保険部会の資料による
利用限度額に対して実際に利用しているサービスの比率(利用率)は年々増加している。しかし、増えたとはいっても利用率は50%に満たない。自己負担金が足かせとなって利用を抑制している。
このことから、医療保険でおなじみの手法、自己負担増で利用率を低下させ、財政を改善しよう、という発想がでてくる。すなわち、現行の1割負担を2〜3割負担にすること、保険外負担を増やすことが検討されている。「
長瀬の回帰式
」にあてはめれば、1割負担を3割負担に引き上げることによって30%程度の利用抑制が見込まれる。
なお、「要支援」で利用率が見かけ上高くなるのは「利用限度額」が「要介護1」の3分の1近くという低い水準に設定されているためである。
後回しにしていた「要介護2」の減少について検討する。
先に掲げたグラフはおおまかな時系列の全国統計だが、もっと細かく見るために、U市(人口4万7千)の統計を下に掲げる。
ある時点での要介護者の分布は、単純化して言うと、過去6ヶ月の認定(新規&継続)の総和ということになる。
2003年4月を境に、「中度」(要介護2・3)が減少していることがわかる。そのぶん要介護1が増えている。03年4月にコンピュータ判定ソフトが改定されたことが原因である。財政優先論者にはたまらない誘惑を感じさせるのではないだろうか。判定基準を少しいじるだけで、原則的に介護サービスから除外される予定の「軽度」区分に追いやり、あるいは施設介護から除外すべく「重度」を絞ることが可能になる。
恣意的な運用がされないように、何らかの歯止めが必要だ。
2004-09-08 UP
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