医療費は年間30兆円を超えたがそのうち10兆円は高齢者にかかっている。老人医療で1人あたりかかる費用は平均して若者が病気になった時かかる医療費の5倍だ。この老人医療費10兆円はもし欧州の安い国並みの老人医療費単価だと4分の1の2兆円少々ですむ。日本の医療はひどく高い。 2002年9月17日、毎日新聞社説より
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ヨーロッパのどこかの国を見習えば、というだけで、何ら根拠を示さずに思い切った数字を掲げている。なかなか度胸がある。 「医療費単価」なる用語を用いているが、これは明らかな思い違い。「病気になった時かかる医療費」ではなく、「病気にならなかった人」も含めての1人あたり医療費で比較すると、70歳以上の老人医療費は若人の4.8倍になる。これが「老人医療費5倍論」の元になっている。 「日本の医療はひどく高い」というが、日本の医療費が先進国中の最下位クラスであることは、ご存知でないのだろうか。 「病気になったときにかかる医療費」を1人1日当りで比較すると、老若の差はほとんどない。老人は、病気がちで、療養が長引くことを示している。 老人医療費は4割減らせる、という議論を聞いたことがある。日本の1人あたり老人医療費は若人の5倍、フランスは3倍。だから、フランス並みにすれば4割減らせるというのだ。若人の医療費をフランス並みにしたら?の反論がある。 1人あたり医療費の老若比:健保連の資料から引用 この健保連の資料にも疑問がある。通常、「高齢者」は65歳以上を指すが、日本の医療費統計では老人保健法の対象(原則として70歳以上)を「老人医療費」として集計している。また、平均寿命の高い国ほど「高齢者」の年齢も高くなり、医療費がかさむ傾向がある。このような要因を補正処理しないと公平な比較ができない。残念ながら、この資料には何も説明がないので、確かめようがない。 |