数字でウソをつくな!(その14) 「とやま保険医新聞」1999.10掲載
99年4月15日の毎日新聞社説は、「薬剤費が年間約8兆円、医療費全体の3割近くを占める。世界の主要国の中で、日本は突出して高い」と述べている。同じ毎日新聞9月18日の社説では、薬剤費が「医療費全体の4分の1を占める‥‥欧米の主要国より高い比率だ」とややトーンダウンしている。 ちなみに「OECDヘルスデータ98」では日本の医療費に占める薬剤費比率を20%としている。 7月16日の朝日新聞社説は、日本の医療費は「先進国の中でとくに多い方ではない」と認め、二の句を継ぎにくくなったのか薬剤費比率には触れず、「ひとりの患者に多種類の薬を出す多剤処方は他の先進国ではみられない」と矛先をかえている。 厚生省・平成9年6月診療行為別調査より作成 まずはグラフを見ていただこう。97年6月診療行為別調査(厚生省)から作成した。なお、この統計では、処方箋料が算定されている明細書と薬剤が包括される明細書(外総診など)は除外している。約4分の1の明細書が除外対象(*)という。「全薬剤比率」には検査や処置・手術に伴って使用される薬剤を含む。 「3割」というのは、「全薬剤」の、しかも少々古いデータを使っているらしい。これを妥当だと思うオメデタイ医療人はいないだろう。 「4分の1」の数字は投薬と注射の薬剤の合計である「薬剤比率」の数値を用いたようだ。これも、薬剤比率の低いはずのレセプトが大量に除外されている。これをもって全医療費に占める薬剤費の比率であると言うのは暴論である。 結局のところ、OECDのデータが実態に近いようである。この20%にしても英仏の約17%にくらべると、やや高い。しかし、朝日新聞社説が言うように、そもそも分母が小さいのである。 朝日が二の句を継げなかった理由がこれで明らかであろう。
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