数字でウソをつくな!(その10)入院統計の怪日本は人口あたりの病床数が多く、しかも在院日数が長い、というのが「常識」のようだ。 下の表は、厚生白書などの公的な資料にも広く使われているデータである。日本は「病院報告」、諸外国は「OECD Health Data」が出典。
日本の入院日数が異常に長いことがわかる。たとえばアメリカならばナーシングホームに入所するようなケースでも、日本では病院に入院という形をとるだろう。「社会的入院」というと、あたかも不正な医療の利用であるかのような語感があるが、実際には、福祉の貧困を医療が肩代わりして、社会的なパニックの発生を防いできたのである。 異常値の原因を、その程度に理解していた。ところが、社会保険旬報2006号(98-12-21)に掲載された日本医師会総合政策研究機構・川越雅弘『日本の平均在院日数は本当に長いのか』を読んで愕然とした。 それによると、アメリカのデータは「平均在院日数が30日以上」の病院を、調査対象から除外したものなのである!! 要するに、急性期医療を対象とした統計なのである。いっぽう、日本の統計は、精神病床・結核病床などを除いた「一般病床」を対象にしており、慢性患者の療養型病床を含んでいる。これでは、そもそも比較にならない。 川越論文では、アメリカの条件に合わせて日本の平均在院日数を試算している。それによると、平均在院日数は19.8日であり、とくに小規模病院に限れば9.7日だという。それでもなお、諸国にくらべて長いとも言えるかもしれないが、このようないいかげんなデータが長年にわたって通用してきたことに驚きと怒りを押さえられない。 厚生省の恣意的な情報操作には目に余るものがある。 |