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数字でウソをつくな!(その6)


 世界の常識、日本の非常識
Last Update 1998-04-27


 いまや唯一の純粋野党、日本共産党のパンフレットに「世界の常識、日本の非常識」と題するグラフが掲載されている。言わんとするところには全く同感なのだが、数字と用語の使い方が適切とは言えず、反対論者に付け入る隙を与えているように思う。
 グラフの下に、小さい字で注釈がはいっているのだが、ある団体が、このグラフを引用し、その際に注釈を省略しようとしていた。これでは誤解を与える危険性がある。


 まず、「公共事業費」の用語は適切ではない。数字でウソをつくな(3)でも述べたことであり、重複するが再び述べる。
 「公共事業費」と言うと、一般会計予算の一般歳出のうちの「公共事業関係費」と受け取られ、国と地方を合わせたものか、と誤解されても無理はない。じっさいの「公共事業費」は国債や地方債の費目その他に隠されていて、もっと大きい。
 公共事業費は50兆円とも言われるが、公共事業によって社会資本が形成される部分が「公共投資」と称される。ここから用地費・補償費を除いたものを「公的固定資本形成」という。このうち、国および地方自治体が行うものを「政府固定資本形成」という。すなわち、{公共事業費}>{公共投資}>{公的固定資本形成}>{政府固定資本形成}という関係にあり、「公共事業費」の用語は適切ではない。じっさいの公共事業費はもっと多い。日本のGDPを、ざっと500兆円とすると、このグラフでは30兆円弱となり、20兆円も目減りする。


 つぎに、公共事業費や公共投資は国際比較が困難なために、「政府固定資本形成」が指標にされている。日本の公共事業が、行政から外郭団体や第三セクターへの出資や補助金の形で行われることが少なくないことを考えると、実態はもっと大きいのではないだろうか。ぜひ「公的固定資本形成」で比較してほしい。

 ついで、社会保障費。これは公費支出分だけの比較であり、イギリスのような公営を原則とした国は非常に高い値になり、日本やドイツのような社会保険方式の国では低くでてしまう。これでは社会保障のレベルを反映しない。公費分と保険分を加えた「社会保障給付費」で比較しても、日本の社会保障のレベルの低さは際だっているのだから、そちらを採用すべきではないだろうか。


 どうやら、政府の支出、という観点から数字をとりあげて、しかも、社会保障への支出が公共投資への支出より実額でも低いことを強調したかったようだ。少々欲張りすぎではないだろうか。
 同じ主張をするにしても、たとえば下図のように主要先進国の社会保障給付費のGDP比平均との比較、同じく公的固定資本形成の比較を対比するほうが、すっきりするのではなかろうか。
 すなわち、日本の社会保障のレベルは他の先進国の半分、片や公共事業(政府固定資本形成)は3倍、という姿が明らかになる。


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イヌホオズキ(花言葉=うそつき)