地域雑誌「新川時論21」第10号の紹介



  目次

◇巻頭言:名ばかりのオーナー(中田哲二)
オウム民事裁判の記録〈2〉 (大山友之・やえ)
◇拠点都市シリーズ《7》「ありそドーム」建設の軌跡(PPM)
◇ダムは川を殺す(鷲見一夫ほか)
◇新川歴史散歩《2》「十二貫野用水」(越前久松)
◇新川 直球・変化球
◇新川時評(野崎弘)
◇介護保険の導入前夜〈その1〉 (谷口恵子・小熊清史)
◇「差別表現」を考える (鈴木修)
◇新川元気人《9》平内好子さんの巻(谷口恵子)
◇書評「生麦事件」(宝田順一)
◇詩とエッセイ(谷口恵子)
◇断る勇気を持とう(町内会費税外負担)(水上昌造)
◇椎名誠のいいかげんなグルメ情報(濱田實)
◇読者からの便り

表紙  愛場砂里(朝日町)
裏表紙 田中光幸(魚津市)

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名ばかりのオーナー(中田哲二)


 「オーナー募集、あなたもコンビニの経営者に」こんな広告を最近目にする。
 ここ数年、わが新川地域にもコンビニエンスストアが続々とオープン。ほとんどは、幹線道路の角地にある。日常生活に必要な最新の商品を簡単に賄える「小規模小売店舗の革命児」。店舗構造、商品構成、商品の配置はどの店も金太郎飴。必要な商品を見つけるのは、いとも簡単。全国で毎日8店、年間約3000店が開業し、逆に年間約1500店が閉業するという。その数はなんと全国で5万店以上とも言われる。
 バブル経済の崩壊、郊外型の大規模小売店舗の急激な展開、あげくの果てに消費税のアップ、医療費の負担増などで、消費不況は、中小零細小売業者をもろに襲っている。酒屋さんやお米屋さんなどが、コンビニチェーンへ加盟契約するのは追い詰められた数少ない選択肢の一つなのであろう。
 コンビニへの転出は脱サラ組も多いと言う。リストラの嵐が吹き荒れ、再就職の道も閉ざされた上での、深刻な決断を迫られた人もいる。
 コンビニ本部とフランチャイズ契約を結ぶには、いくつかの形態がある。自前の店舗を所有するタイプ、本部が用意した貸店舗を賃借するタイプ、本部自身の店舗の経営を委託されているタイプなど。
 私は数カ月前、友人からコンビニ開店を迷っているとの相談を受け、あるチェーン本部の出店提案書を見せてもらった。日商(一日の売上)40万円、50万円という数字がまず目に付く。しかし、粗利の30数パーセントが加盟本部にたいする「ロイヤリティ」と称する異常に重い納入金である。ちなみに粗利益率は、20数%とある。彼の出店計画は、期間15年の賃借タイプだった。
必要な資金は、「加盟金」が300万、店舗の内外装費が1400万、その他商品代や店舗の権利金など締めて約900万、合計2600万とある。什器備品はすべてリースである。自己資金が300万、残る2300万は銀行借り入れであり、毎月の返済は、約17万円。リース料は月額約45万円とある。
 しかし何より驚いたのは、オーナーとは名ばかりで、店舗の設計や品揃えなどは勿論、日々の経理はすべて本部が行い、店独自の経営方針や経営理念などは、一切捨てなければならないということである。
 年中無休、24時間営業、毎日の売上金は、レジの集計表、納品書、請求書、タイムカードなど金銭に関する一切の資料と共に本部に送付しなければならない。問屋への発注は、すべて本部が行い、問屋に対する支払いやリース料、水道光熱費、その他大部分の支払いは、本部で仕切る。オーナー自身による独自の商品開発、値引きや商品の品質などに関する交渉などあろうはずがない。借入金の返済金も従業員の給与も本部が計算し送金してくる。オーナーは、銀行とパートやアルバイトの従業員に支払うのみである。
 オーナーの利益金も本部から送られる。すべての計算を本部が行い、それが既定のオーナー家族の生活費に不足すると、本部から貸し付けられる。経営自体が赤字の場合、支払いに関する資金は生活費とともに、当分の間は本部が貸し付けるシステムだ。
 コンビニ経営でオーナーに求められるものは、店舗そのものと店舗内の商品・現金・経営記録の管理、そして労働力の確保の3点と、独立の事業者としての経営責任である。いきおいオーナー自身や家族の、早朝、深夜、休日出動とならざるを得ないと言う。
 友人は熟慮のすえ、40数年の自らの人生を振り返り、己のアイデンテティ喪失につながりかねないとして、コンビニを断念した。
 友人の断念で、出店していれば競い合うことになった競合店のコンビニオーナーは、当面競合による売上減少の脅威を回避できたことになる。しかし、そのコンビニオーナーは、友人の出店計画そのものを知らない。
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1998.9 僧ガ岳
98年9月都子さんの供養に僧ケ岳を訪れた「追求する会」の一行と本誌同人。

 坂本弁護士一家殺害事件の詳細については
 こちらをごらんください。→ http://www.mars.dti.ne.jp/~takizawa/

以下は本誌のために、「真相を追究する会」の川崎さんから寄せられた記事です。


真実の解明は道なかば
坂本事件の真相を追求する茨城の会  事務局長 川崎 敏明 


 5年を超えた「坂本弁護士とその家族をさがす会」の活動の最中に、オウム真理教の蛮行による残忍な弁護士一家殺害という事実がつきつけられました。
 毎月定点で署名活動や行楽地に赴いての諸行動を積み重ね「生きてかえれ」の願いの一点を求めてきた私たちにとって、この知らせはあまりにも辛く悲しいものでした。坂本、大山家のご両親にとっては、決して信じたくない悲報であったと思います。
 狂信的集団の教祖からの指示があったという言い訳や、反省をしているという偽りめいた供述を繰り返していた「被疑者」に対して、極刑の判決がなされたのは当然と言えます。
 しかし、事件当初からの警察当局の初動捜査、関係者をかくまっていたかのような疑い、さらに、犯行者からと見られる密告などに、誠実な対応を示さなかった様々な事例に改めて怒りを禁じえないのであります。
 残念ながら「さがす会」の目的を失った私たちは、会を改称して存続させ「追求する会」としての活動を再開しました。坂本事件は私たちに日本の民主主義と社会正義の維持の大切さを余すところなく教え、そのことはこの事件の「風化」を許してはならないという今日的な意義を持っています。
 「追求する会」はこの9月の末、一家が殺害され埋められたという場所への追悼行動を実施しました。3人の個々の碑にはその思いが記されていましたが、とりわけ都子さんの碑に至るまでの道のりは、左右、背に断崖が立ちはだかり、雨上がりの土砂や小岩が車を幾度か止める状況でした。「どうしてこんな寂しい所に」私たちはしばし碑の前にうずくまり、極寒の中に長期間放置された無念さを、改めてかみしめ手を合わせました。
 会は今後、坂本事件の裁判の推移を見守ると共に、平和な家族を一瞬にして残忍な手口で殺害したオウム真理教の動きを、国民としての立場から監視を強めてゆくことを確認しています。

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椎名誠のいいかげんなグルメ情報 (濱田實)


 『週刊現代』巻頭グラビア「海を見にいく」で、作家の椎名誠がJR魚津駅前の居酒屋「M」を紹介。ヤキガニを振る舞いながら、「どうカニ? おいしいカニ?」と「店の親父」が聞くー一節がある。
 私はここで首をひねった。「M」はおかみが包丁をふるのでウリの店、「親父」などいる筈がない。早速おかみに電話すると「最近、調理見習に若い坊やを雇ったのでそれと間違えたのでは?それにしても(坊やは)親父には見えないけど…」とこれも首をかしげている。
 ひとつ疑問がわくと、次から次へ気になるところが出てくる。グラビアの命、メニュー写真がやたらに暗く、赤っぽい。湾内の地魚の新鮮さがまるで出ていない。スタッフがアシストして本格的に店内をライトアップして撮ったというのに、この出来ではメニューが泣く。
 カニづくしで有頂天になったのか、記事中で盛んに「マツバガニ」を連呼している。県内ではそうは言わない。「ズワイガニ」か「本ズワイガニ」だろう。
 グルメ情報など、独断と偏見の固まりのようなもの。それがひとつの魅力でもあるし、読者もいちいち細かいところに目くじらを立てないが、こうもいいかげんでは困る。
 こういった取材は、心をうつろにしてありのままを受け止めて欲しい。カニはマツバ、居酒屋は亭主、といった固定観念が椎名をトリコにしていたのではないだろうか。
 椎名誠はよくよく富山県とは相性が良くないらしい。「富山市のラーメンは日本一まずい」とやって物議をかもした前科があったっけ。
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