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マスコミ語小(笑)辞典




見出 用語 解説
あ行−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
あおり煽りあおりをくう、などと使う。余勢・余波の意。煽った本尊よりも、それにのせられた馬鹿どものために割を食う。この過程のなかで、マスコミは重要な役目を果たしている。
あくまであくまで漢字で書けば「飽く迄」。徹底的に、の意味だが、途中で飽きられてしまうことが多い。
あびる浴びる賞賛、非難などを激しく受ける。浴びるほど飲ませて酔わせようとするのと同じく、イッキイッキとはやしたてるようなニュアンスがある。
あぶりだす灸り出す「浮き彫りになる」と似るが、熱源がある。マスコミの力で灸り出すことはマレ。
あらわれ表れ現れ・顕れ・表れ。ある事柄の一部または全部が、そのまま、または形を変えてあきらかになったもの。「〜の証拠である」との意味で使われる。
あんうん暗雲漂う、広がる、たれこめる、などと続く。将来が暗くなるような兆候がある。人為的な現象に好んで用いられ、自然現象のように避けがたい印象を与える。
あんしょう暗礁座礁すれば、沈没の危険もあるはずだが、それについては楽天的である。
いうまでもない言うまでもない言うまでもなく、一般常識であって、あらためて言う必要もない、との意味である。が、かくかくのことを今後は常識にしなさい、との意味も含まれるようである。
いえよう言えよう「言える」だけでも推量表現だが、念を押して推量の助動詞「よう」をつけ加えた表現。念入りに責任回避している割には、大したことを言っていないことが多い。
いえる言える。五段活用の「言う」ではなく「可能」を示す下一段活用の「言える」。推量表現だが、「〜であろう」とするより断定的な表現といえる。前後の内容をみると、じっさいには断定であることが多い。
いくどうおん異口同音口をそろえる、と同義。漢字の分だけやや語調が強い。
いそぐ急ぐ正確には「急ぐふりをする」。急がれた課題がすみやかに解決することは、きわめてまれ。
いちいん一因通常は「いくつかある原因のうちの一つ」の意味だが、仏教用語では「ただ一つの原因」として用いられることがある。マスコミでは仏教用語的な意味で用いられることが多い。
いちづけ位置づけふさわしい評価を与える。おもに高い評価を与えるときに用いる。
いちぶ一部全部ではない。したがってこの言葉がカバーする幅は広い。調査(取材)が不十分なために、表現をぼやかしたいときや、多いものを少なく印象づけたいときにも使われる。
いちまつ一抹抹は「粉末にする」または「塗りつける」の意であり、一抹はほんのわずかなものを指すが、「一抹の不安」と言う場合には、じっさいには「大きな不安」を意味する。
いちり一理10のうち1つていどは道理が通っているが、大方は理にかなわない。残りの9つについては説明が省略されることが多い。
いちれい一例あまたある同種の事例のひとつ。特殊例を一般的であるかのように表現したいときにも好んで用いられる。「一例」という表現に出会ったら、とっさに他に例があるかどうか考える習慣を身につけよう。
いっかく一角一部分、片隅の意だが、囲碁やオセロでは盤の角(隅)が重要である。「一角」も「重要な一部分」の如き意味で使われる。
いっせんを〜一線を画す重要な意味のある、はっきりしたくぎりの細い線。塀の内外のように、近接していながら、ちょっとした違いで境遇に大きな差違を生じる。違いよりも紙一重の近さを強調する。
いったん一端一部分。「氷山の一角」よりも抽象的で漠然としている。
いってい一定自然科学では定まった量を指すが、マスコミでは「わずか」から「かなり」までの広い範囲で変動する量を指す。
いってんして一転して「無節操にも」と補って読んでみること。
いっと一途ひとつ(だけ)の方向。「一途」は「いちず」とも読めるが、この場合は「ひたむきにひとつのことにうちこむ」ことを意味する。で、「いっと」のときも、なにかしら惹かれていくような運命的な感情がこもる。
いなめない否めない可能動詞「いなめる」の未然形に打ち消しの助動詞「ない」の付いたもの(大辞林)であり、文法的には断定の表現なのだが、マスコミは推量表現のつもりで使っているふしがある。
いみあい意味合い色と色合いのように、後者のほうが広い範囲を指す。本来の意味に何がプラスアルファされているかを読み取る必要がある。
いわざる言わざる「言わざるを得ない」。「言うほかない」とも。他に言いようがない、と間接的な断定をするに至ったことに言い訳する表現。「言わ猿」ではないことをアピールする。
うかがわせるうかがわせる助動詞サスが、「自然と(したがって当然)そう思わせる」の意味で使われる場合と、「そう見ることも可能である」の意味で使われる場合がある。どちらの用法か判別は困難。
うきぼり浮き彫り事の真相があきらかになった。あるいは、あきらかになる兆しがある。ただし、悪事に用いることが多い。ただし、報道の力で「浮き彫り」になることはまれ。
うきめ憂き目つらい事態にたちいたること。「憂き」が「浮き」に似るからか、やや軽い印象をうけ、深刻さが伝わらない。
うけて受けて〜を受けて〜する、という用法。他人に由来するかまたは不可抗力的な原因があり、それを理由(または口実)として、かねてより機会をうかがっていた行動をおこす。責任が他者にあることが印象付けられる表現。例)○○審議会の答申を受けて〜
うけとめ受け止め深刻・冷静を参照
うずまく渦巻く中心があり明らかな流れの方向のある渦もあるが、この場合は乱気流のような渦である。
うちだす打ち出す「打ち」は動詞につく接頭語。強調または瞬間的動作であることを示す。為政者の打ち出す施策は、機敏であることはまれ。
うら〜の裏には、と続けて原因または理由を示す。因果関係が論理的に結び付くよりも、雰囲気として結びつく場合に好んで使われる。
うらづける裏付ける証拠を示す、根拠を与える、というほどではないが傍証ていどの場合にも好んで用いられる。
うらなう占う予想あるいは予測する。科学的な根拠が乏しいことを、へりくだって間接的に告白した表現。
おうこう横行蟹のように横に歩くこと。まっすぐでない、よこしまなことがはびこる様子。英語の癌(cancer)の語源は蟹である。
おざなりおざなり−「おざなり」は、やったけど、やりかたが不十分で徹底していないという意味。「なおざり」は、すべきことをほうっておいてやらなかった、という意味。
おしきる押し切る押し通す、と同義。「切る」は「果たす・尽くす」の意。「切る」を文字どおりに受け取ると、押し倒しながら人を斬る。「押切」で飼葉を切る。−−いずれにしてもスマートな切り方ではなさそう。
おそれ恐れ心配、不安と同義だが、「恐ろしい」ことが起こりそうな不安。
おそれいる恐れ入る入る、は動詞について強調するのがふつうだが、「恐れ入る」の場合には、皮肉をふくめて「恐れ入谷の鬼子母神」のようなノリで使われることが多い。
おもい思い名詞としての用法には「うらみ・にくみ」の意味も本来あるらしい。(広辞苑ほかによる)
おもいあがり思い上がりマスコミから「思い上がり」と評されるときは、よほどのことと思わなければならない。もっとも、「棚に上げて」評するということもありうる。
おもいあたる思い当たる経験や記憶から連想する。経験や知識が豊富ならば、自然に「思い当たる」ことになるが、往々にして無理に「思い当てて」いる。
おんしょう温床悪事を引き起こす誘因。悪事は温暖を好むらしく、最近の官僚・政界・産業界その他もろもろ悪事の横行は、もしかして地球温暖化の影響かもしれない。
おんぞん温存冷えないように暖めて保存する。資金、勢力、縄張り、利権などが「暖かい」ものの代表らしい。
か行−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
〜か。〜か。本来は疑問を表現する助詞だが、「〜であろう」「〜であるにちがいない」という断定に近い推定の意味で用いられる。とくに見出しでは多用される。
かいまみる垣間見るものの隙間からちらっと見える。ほんらい「チラリ」なのだが、「丸見え」「モロ見え」のような意味で用いられる。
かぎカギ−カギを握っている、と使い、結果を左右する人・物・条件などを示す。ほとんどが機能していない錆びたカギである。
かくじつし確実視「確実視されている」と受身形であらわすか、誰それが確実視している、と表現され、「確実である」と言ったときの責任を回避する。疑問視、当然視、楽観視なども同様な用法。
かごん〜過言ではない言葉どおりなら「言い過ぎではない」の意だが、「この程度の誇張はいいだろう」の意味で、強い誇張をやわらげるために使われる。
かっこう格好すがた・かたち・体裁。換言すれば、うわべ。
かねない〜かねないなりかねない、しかねない、などと使う。断定表現を避けて推量表現を使いながら断定を下す、ジャーナリズム語にはあまたある手法のひとつ。
かまえ構え迎え撃つ態勢。武道の基本。ただし、「門構え」に似て、こけおどしの「構え」が横行している。
かみしめる噛み締める教訓、辛さ、よろこびなどを深く味わう。「かみころす」は笑い・あくびなどをごまかすためのくいしばる動作である。これに対し「かみしめる」は表情をあらわにし、反芻する。思い出し笑いのような無気味さがある。
かんじいる感じ入るふかく感じる、の意味。入る、は動詞の連用形の後について複合動詞をつくり、「完全」「ひたすら」の意味を加える。皮肉の意味が込められていることもあり、注意が必要。
かんしん関心関心が高まる、薄れる、などと世情を評する。マスコミの自作自演。
きおく記憶記憶に残る、記憶に新しい、などと使う。一般にマスコミは記憶力に乏しく、古い記憶は残らない。
きざし兆し前ぶれ、兆候。「兆」には「うらなう」の意味もあり、当らないことも担保している。
ぎもんし疑問視疑問である、と言わずに、疑問視する向きもある、などと第三者に責任を転嫁するのに便利な表現。
きゅうむ急務急がなければならない仕事・任務・責務。あるいは、速やかに果たされる見込みのない事柄。
きゅうめい究明・糾明真相を徹底的に明らかにする。〜究明が求められる、〜究明せよ、などと用いられる。だまって自ら究明することはまれ。
きらい嫌いいきすぎた傾向。「〜のきらいがある」と、かな表記されるが、漢字表記は「嫌い」であり、否定的な意味を含む。
くすぶる燻る不完全燃焼で煙ばかりが出ている状態。条件さえよければ完全燃焼できるはずだ、との思いがある。
くちうら口裏もとは「口占」とも。人の言葉から吉兆をはかるのが原意。まえもってQ&Aを想定して打ち合わせ済みの受け答えを指す。マスコミの報道が画一的なのは、口裏を合わせているのではなく、「記者クラブ」などの情報源に依存しきっているため。
くちをそろえる。口をそろえる。ふたり以上の同調者がいる、の意味。過半の同調者がいるような印象を与える表現。「口をそろえる」意見がふたつ以上あった場合にもひとつだけを紹介するのが普通である。
くもゆき雲行き雲の動いていく様子から、形勢の意。「〜が怪しい」と使われることが多く、「雲行き」というだけで、怪しげな先行きを予感させる。
けはい気配「けはひ」は音や匂いでとらえられる、そこはかとない雰囲気、「けしき」は視覚的にはっきりとらえられるものを指す。一般に、マスコミは視覚や触覚よりも聴覚・嗅覚が発達しているらしい。ついでながら痛覚は欠如しているらしい。
ごうご豪語大言壮語=「おおぶろしき」、「ほら」の意。「豪語する」人またはグループが「ほらふき」であることを印象付ける表現。
こうさん公算確率の意。確率あるいは可能性、というより権威があるように見える。
こうず構図図で示すことができるほど明白になったなら、いっそ図示してほしい。
こうぞうかいかく構造改革指し示す内容は茫漠として不明確である。報道で使われる場合は「よいしょ」と同義。
こうりつてき効率的予算を効率的に使う、を省略した表現。予算を削減する、の意味。
こえ声があがっている、のように世論を紹介する。意見というほどはっきりしていない雰囲気のようなものを表わすのに便利である。
こくみん国民国民、市民、住民などの言葉はマスコミが大衆を代弁する意味で使われるが、じつはマスコミ自身の主張・利害の隠れ蓑として使われていることもあり、要注意。例)「国民の共感」は「マスコミの共感」と読み替えるとよい。
こしくだけ腰砕け相撲の「決まり手」のうち最もぶざまな負けかた。なすべきことを途中でやめたことを責め、また、ぶざまな様子を揶揄する響きをふくんだ表現。
ことになることになる。〜ということになる。単純な言い換え(数字の換算など)の場合もあるが、ときに、因果関係がかならずしも明らかでないときにも使用される。
こんてい根底背景と似た用法。背景よりも因果関係が強く結び付いている。また、根から幹と枝葉が伸びるように影響も広範におよぶ。
こんめい混迷頑迷な指導者が混乱を生みだしているか、または、昏迷なマスコミが事態を把握できないか、いずれかの状態。
さ行−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
さきおくり先送り近い将来に解決される見込みがあるならば「保留」も立派な選択肢であるが、長期または永久に保留する、換言すれば放棄するの意味で用いられる。「棚上げ」を参照。
さけられない避けられない避けたい物事がおこる。なぜ避けたいと判断されているか、前後の記述で明らかにされていない場合がある。
されるされる。〜とされる・〜とされている。そうあるべきではないのに、何者かによって勝手に「されている」との非難を含んだ言い回し。
しかないしかない何々しかない、で止めれば断定だが、「〜かもしれない」と続けて責任を回避することが多い。変形:〜のほか〜ない(かもしれない)。
しきんせき試金石黒色の珪石に金属をこすりつけ、その色や形から貴金属が本物かどうか判定する。黒の碁石で代用可。メッキの場合は、ヤスリでこするだけでよい。マスメディアの真贋判定にはマユに唾をつけるだけでいい。
しじょう市場「投機」と読み替えてみること。市場原理がもてはやされ美化されすぎるきらいがある。
している〜としている「〜であるとしている」と使い、信頼できない公式見解を紹介する。また、相手方が信用できないことを印象づける。
しゃくめい釈明「いいわけ」のおごそかな表現
しやに〜視野に入れる視野に入る、視野にとらえる、視野が広い(狭い)などと用いる。認識能力の及ぶ範囲。ただし、実現能力ではない。
しょうてん焦点絞りすぎると一面的になりやすく、絞り方が甘いと何が何だかわからなくなる。結構やっかいな代物だが、臆面もなくタイトルやリードなどに好んで使われる。
しょうねんば正念場歌舞伎・浄瑠璃での重要な場面。自己をアピールするための大事な場面あるいはチャンス。
しんこく深刻に受け止めじっさいに当事者が深刻に考えていることはまれ。「深刻そうな表情」としたほうが正確である。
しんそう真相藪のなかに棲み、暗闇を好む、想像上の生物。 
すいめんか水面下政界の根回し。永田町には大きな溜め池があるらしい。まずは、ここの水抜きが日本の「国のかたち」を正すために必要だ。
すくなくない少なくない多いわけでもないのだが、多いような印象を与える。少なからず〜と副詞的にも用いる。
ずくめ〜ずくめ夾雑物が混じらないことを示す接尾語。〜だらけ、は相対的に多いことを示す接尾語。厳密に区別されずに用いられることが多い。
ずさんずさん物事の仕方がぞんざいで、手落ちが多いこと(広辞苑)技術的問題ではなく、根本的に問題があるというニュアンスがあり、行政・企業などの組織に対して用いられることが多い。
すじ何々筋によると〜の、いわゆる筋情報。故あって情報源を明らかにできないような特ダネの場合はまれ。お役所のリーク情報に躍らされていることが多い。
すじを〜筋を通す一貫性を堅持すること。ときに誤りを認めないことを意味する。
すどおり素通り解決されなかった事柄がある。そちらのほうが主要な問題であった。
せきにん責任業務上または立場上はたさなければならない法律上・倫理上の義務。また、不履行の場合に課せられる罰則や償い。マスコミの責任感は一般に薄く、誤報であっても1〜2行の記事で済まされることが多い。
ぜひ是非是非を問う、などと使う。善悪・正邪・黒白・良否・当否・正否・可否と同義。勧善懲悪、正義の味方、−−ジャーナリズムのプライドが匂ってくる。
せまられる迫られる受け身型にすることによって、意味上の主語をあいまいにしていることが多い。
そうごうてき総合的総合的・包括的に判断し柔軟に適切に対処する。これは小泉首相の常套句である。要は、基本戦略はなく(または明らかにせず)、行き当たりばったりで(または突然強引に)やりますよ、の意味。あらゆる批判を一面的として退けるときに便利。
た行−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
たいけつ対決色「色」は様子、気ざし、気配の意味を加える。「対決色を鮮明にしている」は現在対決していることは意味していない。「けはい」、「もよう」を参照。
たいげんどめ体言止め字数を調整するためと、文末の調子を整えるため、断定的表現を避けて断定するためにも利用される。「である」、「に違いない」、「と確信する」と補って読んでみること。
たかまる高まる関心、気運、評価、不安、などを形容する。類義語に、「広がる」、「深まる」がある。これらの三次元的位置関係と使い分けは不明である。
ただす糾す糾す・正す・質す、それぞれにニュアンスの違いがあるが、いずれも正義のためである。「汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼす」とは山本夏彦氏の言。
たちおうじょう立ち往生弁慶の立ち往生から。中止または中断を余儀なくされたものは、もともと強引に行われたものというニュアンスがある。
たちはだかる立ちはだかる前をふさぐように立っているものがあり前進できない。「はだかる」は「開かる」であり、手足を広げる様をあらわす。着ているものを全部はだけると裸になる。立ちはだかるモノの正体を「はだけ」てほしいものだ。
たっする達する〜にのぼる、も同義。ある数値に到達した・達成した、という事実と、よくぞそこまでという感嘆を伝える。
たなあげ棚上げ棚に上げて(仕舞い込んで)販売調整するのが原意。棚から下ろされる見込みがない時は、中止・断念としてもいいところであるが、手心を加えた表現。
だれもが誰もがすべての人が、の意味。「多くが」「半ば」「大半」よりも強い表現である。にもかかわらず、文末は「だろう」などの推量表現で結ばれることが多い。
ちにおちる地に堕ちる落ちる前は、空中か樹上かいずれにせよ高いところにいたわけで、重力の加速により高さの2乗に比例してダメージを受ける。それを罰として受けるべきだ、という裁きの意味が含まれる。
ちょうじり帳尻複式簿記では最後に貸方借方が一致する。それによって誤りを防ぐ。が、しばしばそれによって不正が隠される。
つぎこむつぎ込む無駄な金を使いつづける。おもに公費の無駄遣いに。
つけつけ勘定書・請求書。本来の債務者ではない者のところに回ってくることがしばしばある。
づけ〜づけ糠味噌漬けは糠にまみれ、泥沼に浸かった者は泥に塗れ、肥担桶に落ちた者は糞に塗れる。どっぷりつかって塗れている様。「〜まみれ」も同義。
つじつま辻褄裁縫の用語が語源らしい。左右あるいは上下に、ぴったり合うべきもの。しかし、近年の多様化したファッション感覚では、かならずしもぴったり合うものがよいとは限らない。
つながるつながる〜に関連する・原因になる可能性がある。不確定な場合に好んで使われる。
つのる募る不満・危機感などが「募る」、または「募らせる」。「募らせる」としたほうが強い表現。
てってい徹底世の中には不徹底なことが多く、批判されるべきことが多い。批判にも徹底を求めたいが、徹底した取材がないと、徹底した批判はできない。
てぬるい手緩い「手厚い」または「手厳しい」と「手抜き」の中間状態を示す。
てをこまぬく手を拱く「こまねく」は「こまぬく」の訛ったもの。拱手は手を胸の前で組む中国流の敬礼。子細を了解しながら手を出さない(出せない)姿を小馬鹿にした表現。これは中国蔑視の表現ではないだろうか。
というという。本来は伝聞の表現だが、「○○によれば−という」と出処を明らかにして使われることは少なく、「−という話がもっぱらだ」と補って読まれることを期待している。
とどまるとどまる〜以上ではなかった。〜以上であることを期待されていた。「とどまらない」は、望ましくないのに、はるかに〜以上である(あろう)の意味になる。
ともあれともあれ突然論調が変わる接続詞。論理的から感情的へ、など。
ともない伴い同時進行で、あるいは一方が原因となり他方を生じて、と厳密に読んではいけない。風が吹くにともない桶屋がもうかる?
な行−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
なおざりなおざりすべきことを放置した、の意。「おざなり」を参照。
なかば半ば常識非常識なことが行われていることを強調する。少数であっても、「まれ」でなければ「半ば」とする。「半ば」近くなら「ほとんど」とする。
なかば半ば2〜3割程度を5割程度に誇張する表現。
なくもない無くもない問題がなくもない、などと使う。無いのか有るのかはっきりしてほしい。少なくない、少なからず、なども類似の用法。
なしくずしなし崩し済し崩し=借りた金を少しずつ返済していくことが原意。なにがなんだかわからないうちに、借金が増えているような意味で使われる。また、意図的にそうされたとの被害意識が含まれる。
など他にも類似の事例が(少なからず)あることを印象付ける表現。「など」とされたものの例をあげようとしても、なかなか思い浮かばないことがしばしばである。「一例である」も類似表現。
なみなみならぬ並々ならぬ異常な力の入れよう。その裏には普通でない事情があることを匂わせる。
ならぶ並ぶ縦横に物理的な意味で並ぶのではなく、「たくさん」「おおぜい」の意味で用いられ、ときに「不必要なほどに」とのニュアンスを帯びる。
なりかねないなりかねない。「なるにちがいない」に限りなく近いニュアンスで悪いことが起こる不安をかきたてる表現。
なるまいなるまい〜せねばなるまい、と使う。「まい」は否定の推量を表す助動詞。「ならない」と「なるまい」は2字違いだが大違い。
にじむ滲むしみ出して広がる。「血がにじむ」からの連想からか、痛みを伴う事柄に使われる。また、「ひろがって輪郭がぼやける」の意味も加味している。
にのまい二の舞雅楽に由来。前の舞を真似て滑稽に舞う。由来からわかるように、失敗を繰り返す馬鹿さ加減を嗤う響きがある。
にらむ睨む〜をにらんで〜する、と使う。〜を考えに入れて、の意味。「にらむ」は「注意力を集中してみつめる」(広辞苑)だが、二つの出来事を意味ありげに結びつけるのに便利な表現である。
ぬぐう拭うぬぐえない、と否定型で使うことが多い。なかなかとれない油汚れのようなもの。マスコミ報道には、つねに誤報ではないかという疑念がぬぐえない。
ねづよい根強い根を張って、ぐらつかない強固な−という意味に加えて、目に見えない根だけで、表立った世論にはなっていない、の意味もあるようだ。
ねらい狙い「下心」の上品な表現
のぞく覗く本音・戸惑い・苦悩などが「のぞく」。「垣間見る」や「にじむ」などと同義。
のぞむ望む望む・望まれる。後者のほうは主体が不明瞭であり、好んで使われる。
のばなし野放し規制緩和にたいする否定表現なので、将来死語になるかもしれない。
のりきる乗り切る「切る」は他の動詞の後について「果たす・尽す」の意を加える。落ちずに乗りつづける、堪え忍ぶ、の意味。
のりだす乗り出すいよいよ真打の登場・・・と、期待をいだかせる。
は行−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
はきゅう波及波乱・混乱などが伝わって広がる。疫病の伝染とは異なり、原因はすでに内在している。
はぎれ歯切れ発音・発生の調子。ただし、発音明瞭意味不明瞭なものは「歯切れがいい」とは形容しない。
はしる走る衝撃が走る、亀裂が走る、など。早く伝わる様を示す。また、人がうろたえて走り回る様を連想させる。うわさ話は「駆け巡る」。
はず〜であったはずだ、〜と言ったはずだ、と約束の不履行や変節、言行の不一致をなじる。マスコミ自身を対象とすることはない。
はずみ弾み〜に弾みがつく、と勢いがついて進展する様をあらわす。「ものの弾み」で調子に乗ってしまうような感覚があり、努力の結果ではなく、「運よく」というニュアンスがある。
はってん発展歴史の発展、技術の発展、という場合には「進歩する」という意味で使われるが、マスコミ語では「悪化する」の意味で用いられる。
はびこるはびこる漢字では「蔓延る」。幅をきかす、増長する、の意。手入れの悪い庭や畑にたいする揶揄・侮蔑が込められている。(佐高信)
はらむ孕む孕む、すなわち妊娠の意味だが、まっとうでない妊娠のニュアンスがあり、さらには「波乱」の語感に似ることから、よくない結果が起こりそうな予感を与える。
はらんぶくみ波乱含み前途多難を意味するが、それを期待する響きがある。
はんしんはんぎ半信半疑半分疑っているということは信じていないということじゃないか(佐高信)
はんぱつする反発する不満を持つ、反対意見を持つ。押された反作用としての反発だが、力の差が大きく、押し返すことはまれ。ゴマメの歯ぎしり。
ひっし必至必死の語感に似るからか、死人がでるかもしれないような事態がおこることを予感させる。
ひとしい等しい〜に等しい、と表現されるが、イコールの意味ではない。「ちかい」と置き換えて読んでみること。例:「無いに等しい」は「無い」ではない。
びみょう微妙どちらとも言えない。要するに、「わからない」の上品な表現。
ひょうかにあたい評価に値する評価できる、とも表記する。有り難くも畏くもマスコミが認めてやる、という鼻持ちならぬ慢心がちらつく。
ひょうざん氷山の一角氷の比重は約0.9であることから、露見している以外に、その9倍程度の物事が隠されている─ような印象を強調する。
ふかめる深める理解を〜、議論を〜、友好を〜。課題や目標がかならずしも明確でなくとも、現在の状態が「浅い」ことが印象づけられる。
ふしがある節があるあやしい節がある、思い当たる節がある、のように使う。ほんのわずかな兆候を見定めること。一から十を知る、ではなく、一から十を語るための枕にも使われる。
ふじょう浮上無かったものが発生したのではなく、いままで水面下にあったものが、浮かび上がって、見えてきた。できれば、水面下のうちに報じてほしい。
ふまえる踏まえる過去の経験や成果を尊重しひきついで発展させる、が原意。踏みつけ(反故)にして、方向転換する場合にも好んで使われる。
ふまんが不満が残るおおむね満足だが不満も残る、とも読めるが、ふつうは徹頭徹尾不満である、の意味。
ふみきる踏み切る飛び出す。開始する。鉄道の踏み切りでは、状況をよく見ないと事故のもとである。
ふみこむ踏み込む一歩踏み込んだ議論と評されるには、玉虫色の結論ではなく、利害関係の対立を生む結論まで至る必要がある。一般にマスコミは踏み込んだ議論を避ける。
ぼくたく木鐸中国で、法令などを人民に示すとき鳴らした鈴(舌が木製)から、「世人に警告を発し教え導く人」の意味。マスコミは自らを「木鐸」と任じ、世人を導かねばならない愚者とみなす。
ほぞをかむ臍を噛む反省する、の意。臍はヘソである。よほどのデベソか、よほど柔軟な体でないと自分のヘソを噛むことはできない。
ほどとおい程遠い「程」は時間的または空間的な隔たりを示すための接頭語。程なく、程無し、という場合には「少ない」の意味である。「ほど近い」は遠くないという程度に近い、「ほど遠い」は近くはないという程度に遠い、が本来の意味のはずだが、もっぱら到達不能な遠さの意味で諦めを求めるために用いられる。
ほんばん本番これからが本番〜とされたもののうち、どれだけがそのまま消え去っていくことか。
ほんりょうを〜本領を発揮本領は代々伝えられた本来の所領の意。ごく限られた得意分野で能力を示すこと。換言すれば、他の分野では無能であること。
ま行−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
まえむき前向き一見、なにかの提言をしているようだが、何が前で何が後ろで何が横であるか、実ははっきりしない論旨であることが多い。
まずまず〜ないほとんど〜ない、と同義だが、やや否定の度合が強い。
みえかくれ見え隠れ「かくれんぼ」のようなおかしみがある。「垣間見る」を参照。
みおくる見送る認識していながら手をださない、の意。気付きもしなかった場合は「見過ごす」であるが、しばしば厳密な区別なく使われる。
みきわめる見極める極道と外道がつながっているように、極めることは外れることに、きわめて近いようである。
みこみ見込み予想の意。確実だが、リーク情報などニュースソースを明らかにできないために断定的表現を避けるのにも使われる。
みのがす見逃す注意していたが気づかなかった。注意さえもしていない場合は「見過ごす」である。「見送る」を参照。
みまもる見守る傍観する、の意。
みまわれる見舞われるお見舞いにいきたくなるような、不運な目にあっている。同情のまじった表現で用いられる。ときに、ザマミロというニュアンスで使われる。
むきもある向きもある〜という意見もある、の意。少数派意見であることを強調して紹介するときに使用されることが多いようである。
むける向ける対象物が正面になるように方向を変える。が、そこまでで、真っ正面に向き合ってからの議論は省かれることが多い。
むり無理もない「も」を否定の強調で使うなら「まったく道理」の意味だが、多くは道理も無理もない、という模糊たる表現として使われる。
めいあん明暗「光と影」はもうすこし文学的表現。前後の書き込みが足りないと、たんなる偶然・運命ととられる。
めいうん命運運命が人為の入り込む隙のない巡り合わせであるのに対し、命運は人為がからんでいる場合に用いられるようである。
めいげんする明言する誰某が〜明言する、と使い、第三者の言葉を借りて断定を下し、責任を回避する。断言する、なども使われる。
めぐるめぐるめぐる(連体句)めぐって(連用句)、何かに関連するものが多数ある場合に、その賑々しさを強調する。
めざす目指す目標にする。実現不能ないし困難な目標について、精神的な拠り所(夢)として掲げられることが多い。目刺に似て、他の可能性から目をそらせて世論をひとつの方向へ導く作用も期待されている。
めだつ目立つ人目をひく。文中で、ある部分を目立たせて印象づけたい場合にも使われる。
めど目処だいたいの見通し。「見通し」というときよりも、さらに不確定な場合によく用いられる。目処は八卦の占いに使う「筮」(めどき)に由来するものと考えられる。
めんもくやくじょ面目躍如評判どおり、の意味だが、揶揄の響きを帯びて、「悪評どおり」の意味で使われることがある。
もくさん目算アタマを働かせないで、目で見て計算をしたつもりになって、エイヤッと見当をつけること。しばしばはずれる。
もさく模索目に見えないものを手探りで探す。そのたどたどしさを笑う。
もとめたい求めたい求める、と言い切らないところがいじくらしい。はっきり言うことを求めたい。
もよう模様ありさま、様子、状態、ほどの意味。古語の「もよい(催い)」に似て、近未来の出来事の兆候をも指す。
もりこむ盛り込む何でもかんでも放り込む。「玉虫色」の好意的表現。
や行−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ゆだねる委ねる権限の委譲が伴うかどうかは不問にして、責任が転嫁されたことをあらわす。
ようそう様相哲学用語。可能的であるか、現実的であるか、必然的であるかという見地から見た事物のあり方。(広辞苑より)−−いずれに該当するか、考えるのも一興か・・・
よぎなく余儀なく「余儀」は「代わるべき別の方法」であり、選択の余地がないことを示す。が、ほんとうに選択の余地がなかったかどうか、検討されていないことが多い。
よそおうよそおう平静をよそおう、無関心をよそおう、などと本心を偽っている様子を示す。「粧う」はあて字だが、女性の性質をよくあらわしている。
よだん予断予断を許さない情勢、などと使う。予断を除いたらマスコミに何が残る?
ら行−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
れいせい冷静「冷静に受け止める」などと使う。なすところなく呆然としているだけの場合がしばしばである。
わんわ・ん−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
わかった分かった「〜であることが分かった」。検察・警察などの情報を、裏をとらずに報道するときに好んで使われる表現。(この項は、なだいなだ氏のエッセイ=月刊ちくま03.09による)
ん?さてさて、マスコミ語をつぶさに見ていくと、自分自身がいかにその影響を受けているか思い知らされる。日本語の曖昧さを、マスコミが巧妙に演出し、増幅しているのだ。若者の言葉の乱れを云々する前に、マスコミのずるい語法を問題にしなければならない。

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