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数字でウソをつくな!(その22)

障害者の頻度は5%弱    

 

 日本の障害者は約500万人、人口の5%弱‥‥と書いてあるのを読んだ記憶がある。出典を示すことができなくて申し訳ないが、これが常識的な数字として広く受け入れられているようだ。


 障害者の発生頻度(人口比)を国際比較した。
 なかなか揃ったデータがなくて、いくつかの資料からの寄せ集めだが、公式統計にみられる各国の障害者数の傾向をさほどの誤差なく表していると思う。
 あまりの格差に驚かされる。人種でも風土でもなく、その国が「障害」をどうとらえているかの違いだ。
 平成14年版の厚生労働白書では障害者の数を約600万人と推計している。うち9割が手帳保持者。すなわち、身体障害者手帳(身体障害)、療育手帳(知的障害)、精神障害者保健福祉手帳(精神障害)の交付が事実上の障害者の基準になっている。手帳交付の要件は法令で定める心身の機能障害・能力障害による。
 世界で最も進んでいるといわれるアメリカ障害者法は「主たる生活活動のひとつ以上が制限されること」と定義している。「障害者の権利に関する宣言」(75年国連総会決議)では「通常の個人生活と社会生活の両者もしくは一方が自力で満たされないこと」としている。
 WHOの推定値10%は、国際障害者年(81年)当時行った調査研究に基づいている。やや控え目な数字とみるべき。統計の不備な発展途上国では、この数字を使って自国の障害者数を推定し福祉政策の立案などに利用している。
 国連社会開発・人道問題センターの推定値は、WHOの調査より古い調査ではあるが、年齢要因なども考察している。その後の欧米先進国の調査をみると、WHOの数値よりも実態に近いものと思われる。
 WHOは1980年に「国際障害分類試案」を発表し、2001年、「新国際障害分類」が採択された。日本でいう「要介護」の人は国際的基準では障害者にほかならない。
 「要介護者」と呼ぶことによって「共同連帯の理念に基づき」(介護保険法第4条)社会保険の枠組みに組み入れられ、保険料や利用料を負担することが当然視されている。

    参考資料:大野智也「障害者は、いま」岩波新書/アジア・ディスアビリティ・インスティテ−ト「アジアの障害者」/(財)日本障害者リハビリテーション協会「リハビリテーション研究」/厚生労働省「厚生労働白書」/内閣府「障害者白書」

    注釈

    ○日本の数値4.7%は平成14年版厚生労働白書によった。収載されている数値は平成12〜13年調査のもので、「推計」とされている。障害の重複はダブルカウントされているものと思われるが、そのまま集計した。平成12年の人口、126,892千人との比をとった。
    ○手帳保持者9割については「障害者白書」の統計による。
    ○新国際障害分類ICF: International Classification of Functioning, Disability and Health では、「機能障害」→「心身機能・構造」、「能力低下」→「活動」、「社会的不利」→「参加」と用語が改められた。
    ○統計の年次について。日本=2000年、オーストラリア=1988年、アメリカ=1990年ころ?、中国=1996年、イギリス・ベルギー・ポーランド=80年代初め? オーストラリアの調査では81年13.2%→88年15.6%と増加。調査年次のあたらしいものほど人口高齢化の影響やWHO基準をとりいれるなど、数値は増大する傾向がある。

2003-02-03

    (注の追加)厚生労働省の障害者白書(平成17年度版)に下記のように記述されている。
    「障害者数は、身体障害者351.6万人(人口千人当たり28人)、知的障害者45.9万人(同4人)、精神障害者258.4万人(同21人)であり、およそ国民の5%が何らかの障害を有している。」


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