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数字でウソをつくな!(その17)

みたび「老人金持ち論」

 



 身内の批判めいたことをするのは気が引けるが、全国保険医団体連合会「医療抜本改革に対する私たちの見解」(1999.10)をとりあげる。20ページ余りの薄い冊子ながら、1ページごとにテーマをたて、ふんだんに図表を配して、なかなかよくできている。
 高齢者世帯の貯蓄額をあつかったページがあり、そこに国民生活基礎調査(H10厚生省)のグラフが引用されている。平均値だけをとりだして「高齢者金持ち論」の論拠にされることがあるが、ここでは、中央値から「過半数は400万円未満」と「金持ち論」への反論に使っている。
 グラフをよくみてほしい。ひじょうにフラットで均一に分布しているかのごとくに見える。....目盛りに注目! 刻み目(階級幅)が一定ではないのだ。50万円から始まって100万円、300万円と刻みが大きくなっていく。
 これでは分布のほんとうの姿が見えないどころか、誤解を与える。引用とはいえ、使ってはならないグラフだ。


 目盛り(階級幅)を均等にしたらどうなるか。厚生省に問い合わせてみたが、「国民生活基礎調査」には、そのようなデータが集計されていないとのこと。総務庁の調査は、目盛りが粗いが均等になっている。しかし、「高齢者世帯」にくらべて「世帯主が60歳以上の世帯」(*)は高所得寄りに母集団がずれることを知っておく必要がある。→「数字でウソをつくな」(その13)参照
 それにしても、せっかくの調査から、役に立たないばかりか誤解を誘うような統計をつくるほうもどうかしている。


    (*)ちかごろ世帯主が60歳以上の世帯を「高齢世帯」と表現している資料が多い。「高齢者世帯」と「高齢世帯」と、まぎらわしいが定義が異なる。新聞報道などでは、きちんと書き分けていないこともあるので、読者のほうで中身の違いをよく「読み分ける」必要がある。



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