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数字でウソをつくな!(その15)

「老人医療費は5倍」

 
「とやま保険医新聞」掲載(予定)


 老人の一人当り医療費は若い人の5倍。
 マスコミでよく引用される数字である。外来は4.3倍、入院は7.4倍にもなる。これは国民医療費のうち老人の分を老人の人口で割り算して、「一人当り」医療費」とした数字である。一人の病人が使った医療費という意味ではない。加齢にともなう有病率の増大や重症化などを考慮しないと、ミスリードを招く。
 健保連は、「迫りくる崩壊の危機─医療保険構造改革急ごう」と題するパンフレットのなかで、「老人一人当り医療費」の数値などを図示しつつ、「現行診療報酬体系は、出来高払制を原則としています。このため、必要のない濃厚・過剰診療を誘発し、医療費を増高させていますが、これが、老人医療費において特に顕著です」と述べている。
 このような文脈の中では、あたかも老人に対して5倍も濃厚(過剰)な医療が行われているかのような印象を与える。
 平成9年6月診療行為別調査から1件当り(≒1月当り)の点数を比較してみよう。老人と一般の医療費の格差は意外と小さいことがわかる。これを1日当りにすると、外来では老人674.1点、一般594.4点とさらに接近する。入院では逆転して老人のほうがやや低くなる。
 医療費の無駄をなくすることに異存はない。高齢者についていうならば、心身を総合的にとらえる老年医学領域の研究・教育・臨床を確立することが緊急の課題ではないだろうか。老人と医師をバッシングして解決する問題ではない。


注:老人医療には、65歳以上で老人保健法の適用を受ける者を含む。




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